31 / 38

第31話 結界を解いて

「だってあの騒動の直前、僕達はあんなに高まっていたじゃないか。互いの愛を確信できた今、愛し合ってヒートにならない訳がないからね」 なんなんだ、その自信……! かあっと頬に熱が集まるのを自覚して目を逸らそうとしたけれど、それはすぐに阻止されてしまった。 「目を逸らさないで、ビスチェ。あの娘を助けたら、僕に褒美をくれると約束したじゃないか」 「や、約束したけど」 「僕が望むものなんていつだってひとつしかないんだ。分かっているだろう? ビスチェ」 ラルフの指が、オレの首を守ってきたチョーカーを撫でる。 「このチョーカーを外してくれ。そして、一生僕のものになると誓って欲しい」 「ラルフ」 もうこのチョーカーを外すことに躊躇なんて無いはずなのに、なぜか小刻みに指が震える。 さっき、身体を交えながら懇願されてこのチョーカーを外そうとしたときは、熱に浮かされていたから夢中だったけど、まだしっかりと頭が働いてる状態で外すのって、こんなにも緊張するんだって思い知った。 早鐘のように打ち始めた心臓を押さえながら深呼吸して、オレはチョーカーに手をかける。 ラルフを見上げると、怖いくらいに真剣な表情のラルフと目が合った。 「ビスチェ、震えてる」 オレはちょっとだけ微笑んだ。 「なんか、お前のものになるんだなって思うと……結婚式の誓いの言葉より緊張する」 「ビスチェ……! 絶対に一生、大切にする……!」 「うん。オレもラルフを信じる。オレを、ラルフの番に……お前の唯一にして欲しい」 「一生、ビスチェだけだ」 チョーカーに魔力を通すと、小さくパシュッと音がして封印が溶ける。跳ねて転がり落ちたチョーカーはもうどこに行ってしまったか分からない。 ラルフに唇を奪われて、誓いの口付けよりもずっと熱烈なキスを贈られたからだ。 息が上がりそうなくらいにキスをして、やっと唇が離れたかと思うと、ラルフが上気した頬のまま囁いた。 「さぁビスチェ……結界を解いて」 いつもはおだやかな海を思わせる青の瞳が、夏の日差しを浴びているみたいにギラギラと輝いている。 言われるままに結界を解くと、ブワッ!!!と一瞬でラルフの香りが充満した。 「!!!???」 甘いはずのホワイトムスクのような香りが、極限まで濃縮されて暴力的に鼻腔を支配する。クラクラするような酩酊感に、根こそぎ理性が剥ぎ取られて行くみたいだ。 涼しい顔して、こんなにもラルフが興奮してたなんて。 「ああ……ビスチェ。なんていい香りだ……」 うっとりしたように呟いて、ラルフがオレの首筋に鼻を寄せ、クンクンと匂いを嗅ぎ出した。首筋にかかる息が熱くてなまめかしくて、背中をゾクゾクとした快感が駆け抜けていく。 「匂いがどんどん濃くなっていくね……ああ、もう我慢できない」 スッと身を起こしオレに馬乗りになったラルフは、タイを乱暴に抜き取るとバッとシャツを脱ぎ捨てた。天井を背景に晒された引き締まった裸体につい熱いため息が出た。

ともだちにシェアしよう!