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放たれた憎悪09

 現に有紗は随分立場が変わってしまったのだ。 「う……あーちゃんとかが他人みたいな目で見るんだよ~……ヤだよ」  顔を覆って泣き出す彼女の肩を抱く。  友人として。 「オレは信じる」  しかできない。 「……本当に?」 「信じるよ」  その時の有紗の表情は忘れられない。  今までの憂いと、仲間を得た恍惚感と、利用の手順を考える支配欲。  全てがない交ぜになった、見てられない顔だった。  こんな女だったっけ。  少し虚しくなる。  だが、放っておいたら壊れてしまう。  だから、救わなきゃ。 「で、有紗はどうなって欲しいの?」 「……」  途端に黙る。  まだ信用しきってないのか。 「どうしたいの?」 「せんせーを……」  重い口が突然開いた。 「私のものにしたい」  横顔が本気だと告げていた。 「それは……」  やめたほうがいい。  あいつが何したか知ってるか。  瑞希を襲ったんだぞ。  オレまでヤられたんだぞ。  冷徹さは気づいてからじゃ手遅れなくらい半端ないからな。  何を言えばいい。 「私、せんせー見返してやんなきゃ気が済まないの」  何を言えばやめてくれる。  腐っても元カノだ。  類沢の遊びで陵辱されるなど耐えられない。  しかし、言えば瑞希を裏切ることになる。 「ね、協力してくれる?」  世界は、迷うオレを待つほど優しくはない。 「圭吾となら出来るよ!」  何を?  その問いはぐっと飲み込んだ。  有紗はニコニコ笑って計画を話す。  サボり常習犯の彼女は、授業中にでも保健室に行ける。  そうして、生徒に手を出したら写真に納めて強請ればいいのだと。  そんな簡単に行くわけがない。  一緒にベッドに押し倒されるのが関の山だろう。 「危険だよ」 「で……でもさ、このまま引くわけにはいかないじゃん」 「そんなに類沢が好きなの?」 「すっ、好きじゃないよ。見返してやりたいだけって言ってるじゃん!」  見返してヤりたいだけ、ね。  日が暮れる。  瑞希は無事に家に帰っただろうか。  きっと校外でも奴は連絡してきている。  オレのは口封じ。  じゃあ、瑞希のは何が目的なんだ。  なんでそんなにしつこくする。  なんで何度も苦しめる。  なんで……瑞希なんだよ。

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