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放たれた憎悪12
学校に着いても、中々足を踏み出せない。
今日という日が、もっとずっと後なら良かったのに。
「おはよう宮内」
「おはようございます」
「どした、そんなとこで」
羽生三兄弟。
上から、一夜、千夏、三嗣。
いちにさん。
「いや、別に」
「先輩がアンニュイなとこ初めて見ましたよ」
三嗣はバスケの後輩だった。
「じゃ、千夏がとっておきのギャグで元気出させてあげな」
「木彫りの熊には大規模すぎたか、ってやめろ一夜」
「はは、笑えない」
「宮内ー!」
こんな平和な風景が、俺は少し怖くなった。
「あれ?」
予想に反して紅乃木がいない。
三限が始まっても空席のままで、俺は戸惑うばかりだ。
昨日の紅乃木は確かに人を殺す勢いで帰って行った。
そして、今日実行すると。
ならば何故本人がいない。
それだけじゃない。
俺は金原の席を見る。
開いた現代文の教科書とノート。
彼も二限の後からいなくなった。
二つの空席に心細さと言いようのない不安を感じる。
早く昼休みよ来い。
そしたら、二度と行く気はなかったあの魔の部屋で真実を確かめてやろう。
シャーペンを握る手に力が籠もる。
「体育、移動だぜ。瑞希」
「一夜……間に合わせるから大丈夫だって」
クラスメートが次々教室を出て行く。
着替え終わったというのに、足は動かない。
「瑞希」
とっくに行ったと思っていた一夜が声をかける。
教室には二人だけだった。
俺は随分ぼーっしていたようだ。
行かなきゃ。
でも、足が動かない。
「サボんの?」
「サボんねーよ」
「なんだ、一緒にボイコットしようかと思ったのによ」
「ほら、行くぞ」
二人は駆け足で廊下を進んでゆく。
時計を見上げて、一夜が笑う。
「間に合わねーよな」
「一夜は不真面目だから」
そのとき
校内で
なにが起きていたかなんて
全てを知る人は
いない
誰も
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