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放たれた憎悪11
ジリリリ……
目覚ましが鳴っている。
ジリリ
まだ鳴っている。
俺はベッドに仰向けになったまま、ただその音を聞いた。
紅乃木との会話を整理しながら。
紅乃木は計画を先延ばした。
なんとか引き止めたのだ。
それは違う。
寝返りを打つ。
目覚ましが諦めるように止まった。
紅乃木はタイミングを見てるだけだ。
きっと、彼は俺の、金原の復讐のためだけに動いてるんじゃない。
より惨く。
より長く。
相手を苦しめて過去を拭い去る気だ。
今までどうして、この不安定さを見落としていたんだろう。
金原が別れたことも知らなかった。
なんだかな……
もう一度仰向けになる。
朝日を浴びた天井が、眩しい。
タンスの上の黒いビニール袋が目に入る。
類沢に叩き返してやろうと置いてある玩具たちだ。
母が届かぬ位置だから、見つかる心配はない。
あそこなら、俺が変な気を起こす心配もない。
「瑞希ー、朝ご飯よ! ほら美里、お兄ちゃん起こしてきてあげて」
「ええ~……瑞希寝起き悪いんだもん。やだ」
「瑞希じゃないでしょ、お兄ちゃん」
「オニイチャ~ン、朝だよー!」
癒される。
この日常が、今は大切で仕方がない。
「聞こえてるよ」
階段を降りれば、妹がわざと肩をぶつけてきて、にやりと笑った。
「ほら、オニイチャンはいつも寝ぼけてる」
制服で勢い良く玄関を飛び出す美里は、陸上部だ。
今は冬の大会に向けて練習も激しくなっているらしい。
「瑞希、ご飯冷めちゃうわよ」
「おはよ、お母さん」
「最近顔色悪いわね。ちゃんと寝てる? 携帯ばっかいじってちゃ駄目よ。受験生なんだから」
「はいはい」
わかってるよ。
お母さん。
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