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明かされた記憶02

 紅乃木は登校してから、バスケ部の部室に行った。  今日は休部だから、誰もいない。  というより、もう始業してるし。  カラン。  何か落ちた。  見ると、小さなキーホルダーだった。  見覚えがあるような無いような。  コミカル虎と熊が下がっている。  なんだっけ。  これ。  まぁ、いいや。  紅乃木は端のロッカーを開く。  今は人数が少ないから、いくつか空いているらしい。  そこからジャンパーを取り出すと、制服の上から羽織った。  チャラチャラ、と金属音が響いた。  隅の鏡を眺める。  笑いが漏れた。  似合わねえ……。  黒い学ランに更に黒いジャンパー。  烏か。  紅乃木はキーホルダーを意味なくポケットに仕舞って部室を出た。  腕時計を確認すると、九時。  さぁ、まだまだ一日は長い。  保健室の前でキーホルダーを回す。  チャラチャラ、と。  自分の存在を示すため。  類沢に知らせるため。  だんだんと回転を鈍らせて、拳にそのシルエットを収める。  扉に手をかけて、力を入れて引いた。  露わになる室内。  その中心に類沢が立っていた。  机に向かうでもなく、掲示物を整理するでもなく、ただ中心に立っていた。  白衣が入ってきた空気に揺れる。  彼はポニーテールを確かめるように髪を触り、こちらを向いた。 「やあ」  その後に続くのはお決まりの文句。 「どうしたの?」  来訪などわかりきっていただろうに、類沢は無防備な笑みを見せた。  これも計算のうちか。 「黙って立ってたらわからないよ」  扉を後ろ手で閉めた。  類沢の目にスッと暗い光が差す。 「……紅乃木哲」 「へぇ、覚えててくれたんですか」  二人は一定の距離を保ち、向かい合った。  朝日が保健室を明るく染めている。 「まあね」  ジャンパーにチラリと目を向けて、彼は微笑んだ。  この空間に不釣り合いな出で立ちの来客をどう思っているのだろう。  わからない。 「物騒な話みたいだね」 「まあな」  類沢の口調を真似て答える。  ジリジリと緊張が走る。 「じゃあ、外の表示変えてきてくれるかな?」  沈黙。 「不在って」  試し合い。 「そしたら、邪魔者が入らないよ」 「どうかな」 「え」  二人は扉を振り向く。 「お邪魔しまぁす」  有紗。 「悪いな、アカ。急用だ」  金原。

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