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明かされた記憶03

「何しにきた」  金原が有紗と共に保健室に入る。  その後ろ手で扉を閉める。  バタン。  類沢が目を上げた。 「……何しにきたの?」  低い声が頭を貫く。  金原も怯んで足を止める。  有紗は背中に隠れた。  だが、しっかり姿は知れている。 「ああ、有紗さん。どうでした? 噂は広まりました?」  堂々とよく言う。  白々しささえ感じない。 「広まる訳ないじゃない。お陰で友達減りました!」 「それはそれは」  表情は変わらない。 「……それはそれはって。計算通りとでも言うつもり?」  有紗はロングの髪を苛ただしげに掻き毟る。  ガリガリ。  その音だけが聞こえる。 「金原、出てってくんない」 「いやだね」  チャキ。 「邪魔すんなって言ってるんだけど」  ナイフが朝日を照り返す。  そういえば、瑞希に見せた時は夕日が差してたな。  こうも色が変わるとは。 「はは……それで類沢殺る気? 無理だって。こいつ、手錠されててもオレらなんて相手になんねぇよ」  なんだよソレ。 「瑞希は運動音痴でもなんでもねぇし、オレはバスケでエースだった。それでも力の差は圧倒的だっての」  紅乃木はナイフを構え直し、刃先を類沢に向けた。  その光る先端を見下す瞳。 「さあ? 流石にナイフ相手じゃわからないかもよ」  沈黙。  時計の音が響いている。 「紅乃木君は殺す気みたいだから、先にキミ達の要件を済ませてくれるかな」  紅乃木が目を見開く。 「ふざけんなよ」 「いいから、アカは少し待っててくれって」  ガタン。  思い切り突き飛ばされた金原が壁にぶつかる。  崩れ落ちぬよう、なんとか体制を持ちこたえた。 「なにすんの、アカ」 「むかつくんだよっ」  一際大きな声に全員が身構える。 「なんで余裕ぶってられるんだよ! 類沢にヤられたくせに。どうせ、要件っつっても元カノの我が儘に付き合ってるだけだろ! そんなことの為に来たんだろ。邪魔すんな、瑞希の仇をとりたいのは金原も同じじゃねえのかよっ」 「アカ……」  階上に声が漏れていたかなんて、気にしてる場合じゃない。  類沢の方を向き直る。 「あのさ、仇だ仇だ言い張るけど、実際は過去のトラウマ払拭したいだけなんじゃないの」  カラン。  汗か。  ナイフが滑り落ちた。  類沢の蒼い瞳が見ている。 「違う?」

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