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明かされた記憶14
アカと一緒に歩く。
有紗はふてくされてどこかに行った。
アカと歩く。
こんな当たり前のことが、最近は出来なかった。
わだかまりが。
不安が。
不満が。
そうさせなかった。
「みぃずきはさ」
「ん?」
アカがジャンパーの袖を弄りながら尋ねる。
「なにが幸せ?」
答えにくい質問だ。
答えが見つかりにくいから。
すこし考えてみる。
目下の願いは類沢からの解放だ。
それ以上も以下もない。
それから、金原とアカの仲直りだ。
また三人で笑いたい。
あとはまともな恋愛だ。
「……難しいな」
「みぃずきは考え過ぎてるんだ」
アカは両手を一瞬広げて夕日を浴びる。
「世界はもっと単純で、願ったら叶うんだよ」
「る……」
言いかけて止まった。
類沢に解放されますように。
なんで言えない。
「類沢に……」
やはり言えない。
喉が痛い。
風邪かな。
アカが振り返る。
そして笑む。
「救ってくれてありがとう」
「え」
訳がわからない俺にアカは礼をする。
「変な話、みぃずきだから類沢は許したんだよ……少年院に行かずに済んだのはみぃずきのお陰」
そうか。
これだ。
類沢からよぎるこの感じ。
トクベツアツカイ。
金原が呼び出されてる気配はない。
俺は毎日のように連れ出すくせに。
それは、俺だから。
この感じ。
なんか変だ。
「みぃずき?」
「アカ、俺、変だ」
すぐに踵を返して家に走った。
アカに訊きたいことはまだまだあるのに。
過去とか。
父との関係とか。
色々あるのに。
「ただいま」
「おかえり」
美里が玄関にやってきた。
珍しいこともあるもんだ。
「お兄ちゃん、大変」
お兄ちゃんとはまた珍しい。
「なにが」
「ママとパパが旅行に行ってから一度も連絡ないの」
「いつものことだろ」
「ううん。いつもはちゃんと夜にメールするもん」
まさか。
そんな悪いことを考えても、仕方がない。
「ちょっと休め、美里」
「……」
不満げな沈黙。
俺はすぐに携帯を取り出す。
母にかけてみる。
出ない。
父にかけてみる。
出ない。
すこし鳥肌立つ。
「ママとパパになにかあったのかな」
「滅多なこと云うな」
でも胸騒ぎがする。
人生が一変してしまう胸騒ぎが。
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