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阻まれた関係04

 保健室に走る。  云いたいことがある。  もうやめろとか。  なんなんだとか。  いい加減にしろとか。  ありがとうとか。  あぁ、これは云わなくていいや。  考えながら走っていたせいか、階段で教師にぶつかった。  お互いによろける。  急いで謝ると、彼の落としたプリントを拾って渡す。 「走ると危ないよ~」  また目眩がする。  雛谷。  昨日の今日で会うなんて。  なぜか血の気が引いて、俺は走り去った。  その背後で雛谷が「やっぱ瑞希が一番かわいぃ……」なんて呟いていたなど知らずに。 「類沢っ」  保健室に入ると、数人の女子に囲まれている白衣を見つけた。  きゃあきゃあ騒いでいた女子がびっくりして黙る。 「やぁ、瑞希。どうかした?」  どうかしたって。  どうかしたっ……て。  馬鹿なのか。  確信犯なのか。 「ちょっと……呼び捨て?」 「なにあれ? 宮内?」 「類沢センセにしつれーい」  忘れていた。  この男の周りにいるのは女子だということを忘れていた。  俺は扉に手をかけたまま固まる。 「えと、類沢先生お時間よろしいです、か?」  口が痛い。  喋りにくい。  類沢は一瞬目を見開いて、ニヤリと笑った。  見逃すものか。  俺は目を細めて睨みつける。 「じゃあ、後でねみんな」  意外にも類沢は立ち上がった。 「ええ!」 「なんでですかぁ」 「私たちの方が先ですよ!」 「類沢センセ、やだよ」  その波の中を押して、外に彼女達を出す。  まだ叫びが聞こえる中、類沢は溜め息を吐いて俺の背中を押してソファに座らせる。 「助かったよ」 「いつもあんなんなんですか」  俺の方が溜め息つきたい。  今日はポニーテールじゃなくて、上側だけを結んで垂らしている。  思い切り女性の髪型だ。  睫毛も長く見える。  また頭痛してきた。 「で、何の用? そっちから来るの珍しいね」  当たり前だ。 「……なんで教えた?」  カタリと音を立て、類沢が椅子に座る。  カーテンが背後で揺れる。  寒い風が吹いても開けているのがまた、保健教師らしくて苛ただしい。 「メルアド、俺が知ってることですよ。有紗に……仁野に教えましたよね」

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