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阻まれた関係06
類沢かと思った。
同じ白の白衣だったから。
違った。
「確認したいことがあって、探してたんだよ」
チャラチャラと音を鳴らしながら雛谷が近づく。
例の反省室の鍵が。
俺は昨日の話を思い出して警戒する。
勿論、噂を全て信じる訳じゃないが。
用心するに越したことはない。
「そんなに怖い顔されると、嫌われてるみたいで厭だな」
「あ、すみません」
「あはは、謝ること? 宮内って素直だよね」
何故名前を覚えてる。
二年前に授業を受けただけだが。
覚えてるものなのだろうか。
「確認ってなんですか?」
化学は入試に使う。
ただ、雛谷には添削も頼んでないし、そもそも関わる点がない。
「その前に一つ。午後はサボる気?」
まさか。
その言葉が出なかった。
躊躇が答えとなる。
雛谷はニィッと笑うと隣のフェンスにもたれかかる。
「昔はよくサボったなぁ……こうして屋上に来てさ」
「雛谷先生が?」
「ぽくない?」
「……」
そういえば嘘になる。
彼も類沢と似通う空気を持っていて、学校とかいう規律から逸脱しているように見えるからだ。
「宮内は嘘もつけないんだね」
「そうすね」
暫くの沈黙。
つい雛谷を観察してしまう。
百六十程度の背に、童顔。
ヒナヤンというあだ名が似合う、チワワ顔。
類沢がV系とするなら、アイドルってとこだ。
変な例えをした。
ついさっき有紗と言い合いした場所に、雛谷と二人でいる。
この現状がおかしい。
雛谷はフェンスに手をかけて空を仰いでいる。
「……授業はないんですか?」
「んー? 流石に授業あったらサボれないよ、教師だもん」
ですよね。
俺は苦笑いして俯く。
どうしていいかわからない。
二年ぶりに話す雛谷と、二人なんて。
ぞわり。
寒気が走る。
昨日の話を思い出したのだ。
確か、最初の犠牲者は部活で二人きりになって。
いや、忘れよう。
予定は未定っていうし。
意味が違うか。
考えたことは実現するっていうし。
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