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任された事件20

 今日だけは、一緒に休んで欲しい。  そう、アカは言った。  受験期とは言え、親友の命に関わる問題だ。  金原と快諾した。 「詳しく……聞いてもいいか?」  午後にさしかかった所で、重い口をなんとか開いた。 「このままじゃ、手探りすぎるからさ」  アカは低く、そうだよなと呟いた。 「父さんは、俺を息子として扱ったことはなかった。母さんがいないと、すぐに怒鳴って暴力も振るった。でも、そんなのは優しい方で……」  留守番してる時の話に目が眩んだ。  小学生を犯すか。  父親が。  口を開くのも躊躇われる空気が漂う。 「初めてが父親とか終わってるよな」  アカは空嗤いをする。  だが、俺も金原も笑えなかった。  息を吐き、ベッドにもたれる。 「病院名だけは聞いて、一度も見舞いには行かなかったよ。ただ、看護婦に異常があったら伝えてくれって言ってさ」  カーテン越しに太陽が揺らめく。 「少年院から出てから外見変えて、家も出て行った。もう一度刺したい、トドメを、とか考えてたのに、どこか怯えてたんだろうな……父さんに」 「一年前に脱走したって?」 「あぁ。術後の回復が早かったらしくてな。全然身内が訪ねて来ないから、不審に思ったんだろうな」  携帯を取り出す。 「着信拒否にした」 「……」 「でも、非通知で来るだろうな」 「警察には」 「行ってなんてゆうの? 父親に狙われてるって?」 「あ、いや」 「……ごめん。みぃずきは悪くないのに」  夕方まで、何を話していたかわからない。  ただ、玄関で見送るアカの目が、見たことない位震えていた。  不安に。  恐怖に。  父親に。 「どうすべきなんだろ……」  金原が石を蹴る。  同じことをずっと考えている。  無力だな。  俺。 「様子見るしかないよ」 「それじゃ相談してきた意味ねぇだろ!」 「俺だって一杯一杯なんだよっ」  金原が黙る。  つい、叫んでしまった。  こんなの違う。  なに云ってんだ、俺。 「……悪い。初めは瑞希を守るって約束したのにな」 「いいよ、もう」 「……じゃな」  金原は曲がり角に消えて行った。  あぁ、くそ。  自分に苛立つ。  夕日を睨む。  どうしたらいい。  美里にも会いに行ってない。  兄も友人も生徒も全うしていない。  あぁ、くそ……  ただ、歩いた。

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