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質された前科13
ルルルル……
携帯が鳴ってる。
誰かな。
みぃずき?
金原?
誰かな。
でも、どうでもいい。
「はッッ…ぁうっ」
今は考えられない。
首輪が重すぎて。
快感が強すぎて。
「っくそ……出ねぇ」
オレは電源ボタンを力強く押した。
出るわけ、ないか。
そんな思いも過ぎる。
それから部屋に戻った。
「金原くん……哲は?」
ショートになった髪。
減った皺。
若返った顔立ち。
アカの母親。
オレは、今ここにいる。
攫われた親友の母の家に。
「出ませんね。出れないでしょ」
「そうよね……あぁ、厭だわ。本当に信じられない」
再婚して、腹に子供もいる。
オレは知った瞬間冷めた。
この女へのなにもかも。
紅乃木襟梛。
アカを見捨てて一人幸せかよ。
家も上等だ。
アカのアパートなんて部屋一つぶんにもなりはしない。
大層なご身分で。
そう云いたくなる。
同時に哀れだ。
一人息子が、夫に奪われた。
いや、拾われたが近い。
どんな気分なんだろうか。
「警察……警察だわ」
立ち上がってウロウロと歩き回る。
「そうよ……警察に捜してもらって、逮捕してもらいましょう」
「あんた母親だろ」
水を打ったような衝撃がその顔に走った。
堅苦しい言葉じゃ伝わらない。
「実の父に監禁されて、誰にも云いたくないことされてる息子を世間に突き出してなんとも思わねえの? 思わねえのかよっ!」
「な……」
「警察に全部任せて自分は知らないって? 母親として失格じゃねぇの!」
キョロキョロするな。
しゃんとしろ。
母親だろ。
怒りが上る。
だが、違う。
怒りをぶつける相手はこの人じゃない。
「云われなくてもわかってるわよ! でも……でもあの子は私の助けを必要としなかったっ……ただの一度も!」
意外に激情派。
だけど、思い込み派。
「何回救いの手を差し伸べたって?」
襟梛さん?
「関係ないじゃない」
「父親の脱走は聞いてた?」
「…通達は来たわ」
「あれから一度でもアカを守ろうとしたんですか!?」
横暴だよ。
横暴だよなぁ?
いきなり現れてこの無礼だ。
でも、言わせてもらう。
伝えなきゃ伝わらない。
「今が一番貴女の助けが必要なんですよ!」
夫に相談する。
そう答えたら出て行こう。
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