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晴らされた執念07

 誰もが感じた。  異常さを。 「新しい夫はどうだ? 気をつけたほうがいい。目を離すと櫻に悪戯を仕掛けているからな。向こうの連れ子だろう?」 「なにを云ってるの?」  強気だが、目が泳いでいる。  それを見て男は更に饒舌になる。 「哲をどうやって失ったか、よく思い出せ。また同じ結果になるぞ。今の旦那は体の相性が良いんだろ? 腹の底で何を考えているかも見定ねないまま結婚するとは……愚かな女だよ」 「関係ないでしょ。それに、あなたに何がわかるの」  声が震えている。  男は満面の笑みを浮かべた。  まるで、その言葉を待っていたかのように。 「関係ない。あぁ、そうだ。お前はもう赤の他人だ。だから早く帰れ。ここから消えろ。哲はもうお前の子じゃない」 「なにを……」 「そうだろう? 今自分で言ったじゃないか。関係ないでしょってな」  俺は萎縮しながら類沢を見た。  口を出せない俺達の代わりにと。  だが、彼は涼しい顔で黙っていた。 「哲に会わせて」  襟梛が門に手をかける。  ガチャガチャ。  静かな街に響く。 「会わせてよっ。それは離婚の時に約束したでしょう?」 「哲が拒否しなければな」  襟梛が固まる。 「……哲が?」  男は腕を広げて玄関を示す。 「こんなに開け放しているんだ。哲も出たければ自分で来るだろうよ」  そのとおりだ。  しかし、俺と金原は別のことを思っていた。  今、コイツはここにアカがいることを自白したと。  そしてアカが出て来ないということは、拘束されているのだと。  アカがだよ?  あれほど父親を恐れていたアカが、なんで今逃げてこないんだ。  理由は一つ。 「哲はどこにいるの?」 「二階の自分の部屋だよ」 「なんで哲の部屋があるの?」 「ここが家だからな。お前と違って、親権を持っている。部屋を用意するのも義務だろう?」 「あの子が望んだの?」  そんなわけないだろう。 「あの日と同じだ」  そんなわけがないだろう。  男が扉を締めようとする。  ヤバい。  多分、もう二度と開けてはくれないだろう。  引き止めなきゃ。  なんて言おう。 「なら、息子さんの御様子を見させて頂けませんか」  口を開いたのは類沢だった。  初めて存在に気づいたように、男が目線を送る。 「申し遅れました。私、市役所の児童相談部に勤める類沢と申します」

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