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晴らされた執念18

 どうしてあなたは覚えているんだ。  おれがワザと助けたことを。  忘れてしまっていたなら良かったのに。  そしたら、悩むことなく、一昨日の朝に全てを終わらせられたのに。  この家に入った時点で。  鞄から取り出して。  たった数瞬で。  全部終わらせられたのに。  覚えているんじゃ、出来ない。  だって、それは誓いも続いているってことなんだから。  また、あの日に戻ってしまう。  みぃずき達が来なければ、きっと心が壊れるのが先で、二人とも息を絶ったかもしれない。  だから、ありがと。  そして、父さん。  あなたには二回目の貸し。  あなたはおれに二回目の借り。  生かしてあげる。  おれも生きたいから。 「いつか……」  アカは悲しそうに言う。 「いつか、父さんがあの誓いを忘れたら、借りを返してもらいに行く。その時は絶対に躊躇わない。だって、あなたはおれの人生を二回も壊そうとしたんだから」  ナイフを服の中に収める。  まるで、そこが居場所のように。  鎖を邪魔そうによけ、鞄を背負い、父の前に立つ。 「……生かしてあげる、か」 「そう」  父は顔を手で覆った。 「おれは……哲に生かされているのか」 「そうだよ」 「おれが守っていくはずだったのに……哲は」  アカが襟梛の手を握る。  久しぶりに息子に触れられたからか、彼女は涙ぐんだ。 「ちゃんと罪を償ってから、父さんは母さんを守るんだよ。働いて慰謝料でもなんでも払ってさ。おれじゃなくて、母さんを守るんだよ」  アカの目からも涙が溢れた。 「母さん……おれがいなければ、父さんと愛し合えていたはずなんだからさ……おれが二人の生活を傷つけたんだ、から」  襟梛が嗚咽を堪える。  そうだ。  この家族の最悪の結末は、妻だった襟梛が旦那だった父を殺してしまうこと。  窓から見える黒い車。  きっと、アカはそれを感じとっていたんだろう。  その原因も。 「幼稚園まではっ……あんなに幸せそうだったじゃん……母さんも、父さんもさぁっ」 「哲……」 「なんでっ、なんで……こうなってんの……みんなしてナイフ向け合って、言葉も通じなくなって。第三者が入ってくれなきゃまともに会話も出来なくて」  俺達を一瞥して、アカは首を振った。 「……違かったじゃん」 「あなた」  襟梛が涙を拭い、しゃがんで元夫の肩をさする。

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