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晴らされた執念17

「みぃずきが今云った通りだよ。おれには愛してくれる人が一杯いる。また院になんか入って人生無駄にしたくないから」  チャリ。  右手から鍵が現れる。  それを首の鎖の鍵穴に差し込み、ゆっくり回した。  カチャン。  鎖が重力に従い、落ちていく。  ガシャン。  重厚な衝撃音が響いた。  俺はそこで気づいた。  さっき、刺したときか。  あれは、鍵を奪うためだったんだ。  アカは振り返り、そうだよと言うように口端を上げた。 「借り、二つ目だから」 「……借り?」  アカは類沢の元に歩き、ナイフを要求するよう手を差し出す。  類沢も無言で渡した。 「おれが父さんを生かしてあげる」  襟梛が小さく声を上げる。 「否定出来ないよね。だって、父さんはそれを知っているんだから。覚えてるんだからさ」  男は、驚きもせず。  怒りも見せず。  黙って息子を見つめていた。  父さんは、あの晩おれが何をしたかハッキリ覚えているって言った。  あの誓いも。  二人で、暮らそう。  でも、父さんはいくつか勘違いをしているんだ。  確かにあの日、おれはあなたを殺さなかった。  多分、出来なかったんだと思う。  怯えてしまったから。  そして、どこかに父さんの束縛が残っていたから。  無理やり誓わせたあの晩、こうも言ったよね。 「もしも、おれが死ぬときは哲も一緒に連れて行ってやる。逆も同じだ」  だから思った。  ひょっとしたら、本当に父さんが死んだら、おれも死ぬかもしれない。  心臓に届く前に、ナイフを抜いたのもそれが過ぎったから。  迷ったから。  気づけば、救急車を呼んでいた。  悪漢に襲われた?  そんな嘘、もっと後に吐いたって良かった。  父が入院して、ほんのすこしだけ安心したのもある。  生きていた。  なら、おれも生きていられる。  おれは父さんを憎んでいる。  殺したいほど。  父さんはおれを愛している。  所有したいほど。  だから父さんに二度と会いたくはなかった。  会ったらこの二つの欲望がぶつかるだろう。  それが何より怖かった。  父が死ぬのも。  おれが壊れるのも。  だから、逃げた。 ―これはただの躾。  息子が犯罪者になったのは父親の責任だからな。  誰が来たって大丈夫。父さんが守ってやるからな―  違う。  おれがあなたを守ってるんだ。

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