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どこまでも06

 病室の扉を開けたとき、花瓶を持った美里が目の前にいた。  金原と紅乃木がびくりとする。 「あっ……私もう帰りますよ」 「いえ。大丈夫ですけど」 「類沢先生! またいらしてくれたんですね」 「キミもね。気をつけて帰りなよ」  軽快な足音が遠ざかる。  類沢は二人の視線を感じた。 「……また、いらしてくれたんですね?」 「センセー、いつから通ってたの」  扉を支えながら目をぐるりと回す。 「クリスマスかな」 「はあっ?」  金原の口を紅乃木が塞ぐ。 「病院では静かに」 「んぐー!」  話がわかるのは赤髪の方かな。 「さっきの、瑞希の妹?」 「大分久しぶりに見たな」 「元気そうだったね」 「良かったよ」  類沢が耐えかねて足を踏み出す。 「お前たちいつまでそこで突っ立ってるの?」  二人はカツカツと入った。  その足もピタリと止まる。  ベッドに横たわる、瑞希を見たからだ。  表情が消える。  動いたのは金原だった。  ベッドに近寄り、そっとしゃがむ。  目線を同じにして、見つめる。 「……意識、ないんですか」 「入院したときからね」  出窓にもたれる類沢を紅乃木が睨みつける。 「なんで言わなかったんですか」  肩をすくめる。 「連絡先も知らないからね」 「違う。なんでこんな大事なことを先生方は何も言わずに、ただの欠席にしたんですか」  ゆっくり、問い詰める。 「アカ」 「圭吾は黙ってて」 「アカ!」 「なんだよ!」 「瑞希が、知られたくなかったんだろ」 「え?」  金原が紅乃木の手を引き、瑞希の手を握らせる。 「……細」  息を詰まらせる。  類沢は黙って外を眺めていた。  外に出る。  広い中庭だ。  車椅子を引く人が何人もいる。  さすがに煙草は禁止だろう。  類沢はポケットに手を入れ歩いた。 「センセ。雅樹って奴どこにいるんですか」 「それは教えられない」 「なんでですか」 「彼も被害者だから」  風が吹く。  冷たく乾いた風。 「瑞希の意識が戻らなかったら?」  類沢はしばらく止まり、それから金原を振り向いた。 「親友なんだよね」 「ああ」 「よくそんなこと想像出来るね」  三人の間を風が分かつ。  それでも同じ場所を見上げた。  瑞希の病室を。 「待ちます」 「オレも」  僕も。

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