224 / 238

どこまでも07

 四日後の昼休みだった。  書類を整理していると、職員室の方が慌ただしくなった。  外に出てみると、サイレンも聞こえる。  類沢は騒ぎの方に向かった。  国語の波賀が此方を見つけて歩いて来る。 「どうしました」 「私も詳しくはわからないんですがね……化学室で何かあったみたいで」  そこに女性教師がやってきた。 「類沢先生に波賀先生。大変なんですよ。男子生徒三人が化学室に忍び込んで薬品を勝手に使ったみたいで、酷い怪我を負ったようです」 「忍び込んで?」  昼休みもあって生徒がわらわらと集まってきた。  類沢たちは玄関に向かう。  後ろで体育担当が生徒を必死に留めていた。  担架に乗る男子を見てはっとする。  顔を押さえ、息も絶え絶えの男子。  腕に包帯を巻いている男子。  見覚えのある三人。  いつか、屋上で見た…… 「雛谷先生!」  波賀が叫ぶ。  まさか。  階段の壁にもたれ、辛そうに降りてくる。 「大丈夫でしたか?」 「大丈夫に見えるー?……ナミナミ?」  波賀の愛称。 「腕、どうしたんですか」 「あは……生徒庇った時にね」  類沢が近付くと、雛谷はニィッと口の端を持ち上げた。  予感が的中した。 「手伝いますよ!」  波賀が救急隊員の元に行ってから、口を開く。 「……やったの?」 「わかっちゃうかぁ」  よろりと崩れた雛谷に肩を貸す。  怪我は本物のようだ。 「類沢先生だけはバレる気してたんだよね」 「あの三人見ればね」 「ふふ……ようやく復讐だよ」  サイレンが響く。  晃達が救急車に運ばれる。 「あいつら、女子も数人脅してたみたいでさ。相談された時にもう計画立ててたなぁ」  それから類沢を見上げる。 「ま、瑞希以外はどうでもいいんだけど」 「嘘吐くね」 「ははは……そうですね」 「硫酸?」 「そこは秘密ですよ」  救急車が出て行く。  教師達が戻って来る。 「アナタの次に、裁判ですかねー」 「僕は受けてないけど」  雛谷が目を見張った。 「恐い恐い……」 「お前に云われたくないな」 「雛谷先生、詳しい事情を報告して下さい」  教頭がそう言った。  ざわめきが聞こえてくる。  雛谷は腕を外し、一人で教頭の方に歩いた。  ふっとこちらを向き、泣きそうに笑った。

ともだちにシェアしよう!