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一周してわかること02
「頼みたいことがあんだけど」
忍はその朝何年かぶりに母親の部屋に入った。
積み上げられた衣類に転がる使用済みのコンドームを避けながら。
母はベッドで下着姿で寝転がっていた。
肘をついてこちらを振り向く。
右手には煙草が揺れていた。
「なあに? 珍しいじゃない、あんたからこの部屋来るなんて」
今年三十六歳になるとは思えないほど好き勝手なオーラが渦巻いている。
いつまでこんな生活を続けるのか俺にはわからない。
けど、そんな屑にも俺には敵わない取り柄ってものがあって。
今回はそれを初めて利用させてもらいに来たんだ。
「大体わかるわよ? お金じゃない。性質の悪い女の処理もあんたは自分でできるもんね。そしたら……」
むくりと起き上って脚を組む。
秘部を隠そうともしない。
この年にして毛のないそこからピントをずらす。
見て恥じる年でもない。
「ふふ。誰を消したいの?」
「この六人。辞めさせてくれたらそれでいい。入院でもいい。受験までの一年半、学校に入れないでほしい」
投げられたメモを開きながら母は唇を舐めた。
意味ありげに頷く。
「柾谷さんに頼めばこの学校の生徒百人だって消せるわよ。お望みならあんたと拓とかいう子だけにしよっか?」
忍はただ目を細めて母親を見つめた。
「おお、怖い。本気なのね。ふふ、わかったわ。三日で済ませるからその間は学校を休みなさい。また酷いことされたくないでしょ、この子たちに」
「三日……」
「長い?」
「いや。別に」
「ベツニ。好きねえ、その言葉。あたしは大嫌いよ。逃げ以外の何物でもないじゃない。まあいいわ。あんたともあと一年半の付き合いだから、最後の我儘として聞いてあげる」
そういって枕元のタブレットを取出し電話を掛ける。
解いた脚をぶらぶらさせて。
白い白い、細い脚。
―始皇帝みたいな奴だな―
いつだったか、やり捨てされた男が玄関で吐いていったっけ。
あの時はどういう意味かわからなかったけど。
忍は静かに部屋から出た。
どっちかっていうと化け物に近いってことだろ。
オブラートに包んで言うからてめえは捨てられたんだろうが。
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