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一周してわかること11

「結城ー! 忍が、忍が」  翌日忍が事前説明会に行っているのを知った昼休み。  事情をすべて把握している結城が抱きついたオレのぽんぽんと背中を撫でる。 「三週間なんてドラマの展開もそんな進まねえだろ。安心しろ」 「すっげえ進むだろうがぁあっ。なんか、なんかライバルみたいな奴といい感じになるくらいには進むだろうが」  隣にいた女子が噴き出した。  見ると心底可笑しそうにオレを見上げた。 「ふふふっ、ごめん。古城くんていつも来てるけど本当面白いよね」 「おいおい、単細胞を褒めるな。調子のって分裂する」 「なんでだよ」 「あはははっ。おかしー」  周りの男子もわらわら集まってくる。  いつの間にかずいぶん一組のメンツに顔が知れ渡った。  ほとんどの生徒と名前で呼び合う仲になったほどだ。  だからもう扉を開けるのに躊躇はなくなった。 「たっくん、一組に入っちゃえば?」 「じゃあ、結城四組行け」 「やだ」 「行け」 「やだ」  無表情で答える結城の肩をつかむ。  けれど問題を思い出してそのまま崩れた。 「なんなんだよもうっ。忍が……」 「うっせーな。また来てたのか、拓」 「忍っ」  冊子を抱えた忍が何事もなかったように席につく。  それから真剣な眼差しでそれらを読み始めた。  本当に別人みたいだ。  中学では同じ空気を纏っていたはずなのに。 「忍……なんでそんな頑張っちゃうんだよ」 「あ? 友人なら応援しろよ。友の勉強を」 「知るかっ。オレと遊んでくれない忍なんて忍じゃないっ」 「駄々っ子かよ。付き合い切れねえ」  だがその眼は前のと同じ優しい色をしていた。  出発の日。  忍がオレのアパートに挨拶に来た。 「いってきます。じゃな」 「えっ。それだけ?」 「時間ねえんだもん」  キャリーをゴロゴロ転がす忍を引き留める。  短パンとタンクトップにシャツ。  忍は夏に入ってからいつもこの格好だった。 「ん?」 「その……いってらっしゃい」 「んー」  にいっと笑って忍はオレの肩を拳で軽く小突いた。  ずいぶん腕も焼けた。  それでも同級生の中では白く毛も薄いほうだが。 「ウサギじゃねえんだから、死ぬなよ」 「無理かも」 「バアカ」

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