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時針が止まる時15

「岸本様。お呼びです」  葬儀の関係者が後ろから進み出た。  彼女は言いかけた口を閉じてオレを見た。 「いいや……私の性格じゃないもの。忘れないでしょ、貴方は。その秘密が有る限り、あの子を。忘れたらすぐに消しに行くけど」  クッと彼女は笑んだ。 「あの」 「そうそう。あの子の部屋は買い取ったから好きにしなさい。これ、鍵」  そういって鍵を手渡すと、すぐに裏手の方に消えてしまった。  手のなかの鍵を見下ろす。 「……秘密?」  忍。  お前は何を隠してたんだ。  記憶?  中学のときの?  結婚てなんのことだ。  母親と縁を切るのは嫌いだからじゃなかったのか。  オレが関係してる?  初耳だよ、忍。  聞いたこと、無かったぞ。  あんなに喋ったのに。  カチカチ。  時計?  違う。  聞こえるのは木魚の音。  忍。  灰になるのか。  もう二度と話せなくなるのか。  なんで。  なんでお前が。  手を握りしめる。  ううん。  それはもう……問わなくていい。  忍。  真っ直ぐに見上げるからさ。  手を振ってくれよな。  カチカチ……  いつになったら止まるんだ。  この音。

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