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時針が止まる時18
「拓。覚えてないとは言わせねえぞ」
なんとか手紙の続きを読む。
「中学のマラソンで二つ言うこときくって賭けやっただろ。あれ一つ残してたんだよ、俺は。それ今使わせてもらうからな」
何年前のだよ。
覚えてるけどさ。
目線を下にずらす。
「妻にしろ、馬鹿」
「ははははっ」
つい笑いが爆発してしまった。
引き笑いしながら顔を膝に埋める。
「くくく……あー、もう。可愛すぎんだろうが、忍」
にやにやがとまんねえよ。
殺す気かよ、忍。
「なんで命令形のプロポーズなんだよ……」
笑いが治まらない。
くそ。
くそっ。
悔しいくらい嬉しい。
手紙はそこで終わっていた。
もう一度初めから読もうとしたが、出来なかった。
唇を噛んでも涙が視界を奪うから。
忍。
ありがとう。
ごめん。
お前はずっと言おうとしてたんだな。
なのにオレは言葉もなく暴走ばっかして情けないよ。
忍。
手紙を綺麗に畳んで封筒に仕舞う。
それを握ったままベッドに倒れた。
カミサマ。
お願いします。
忍を抱かせてください。
今度はちゃんと伝えるから。
ちゃんと……
「拓」
目を開ける。
ベッドのそばに、人影がある。
夕陽の中で忍が座っていた。
振り向いて笑う。
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