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超絶マッハでヤバい状況です04

 マスターが手早く道具を仕舞う。  店中で安堵と失意の溜め息が零れる。 「また勝ったな」 「如月さん無敗だね」 「なに? 紫苑はまたマスターに賭けたの?」 「そうだが?」 「ムカつくなぁ……ねぇ、マスター紫苑ともやったら?」 「悪いが、一回につき相手は一人までと決めているんでね」 「むー」  雛谷は渋々、追加注文をする。  紫苑と恵介もまた。  月末の小さな楽しみ。  勝率は五分五分だからこそ、盛り上がる。  勝てない勝負をするバカはいない。  雛谷はポーカーやブラックジャックより何より、この単純な丁半が好きだった。 「話の続きだが……その新入りがどうかしたのか?」 「気になるだけー」  髪を梳きながら答える。 「スカウトか?」 「さぁね」  多分、マスターはもう解っている。  情報を頼むのはスカウトの人捜しの時だけ。 「ガヴィアのトップが代わったことは知ってるか」 「あぁ……雅樹でしょ」 「結構荒らしているぞ」 「らしいね。うちの客も何人か取られてるから」 「いいのか?」  雛谷はチキンをつまみながら口をすぼめる。  美味しそうに噛み砕いてから、小さく囁いた。 「まぁ、出る杭は全力で打たせてもらうよ……歌舞伎町のバランスを守るためにもね」  マスターはその眼にゾクリとした。  カールがかった茶髪から覗く、獣のような瞳に。 「じゃあ、またね。マスター。今度は奢って貰うよ」  いつもは子犬のような癖に、時折凶暴になる。  長い付き合いで雛谷をよく知るマスターは、嵐の予感に息を吐いた。  

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