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超絶マッハでヤバい状況です13

「なんでみんな怖がらせることばっか言うんだよ……」  紅乃木がマイクで会話しているのを横目にぼやく。  すぐにイヤホンに声がした。 「今から店に入る」  類沢の声。 「りょうかーい」 「了解です」  自分たち以外にも次々と声がする。  シエラのホスト全員が、それぞれ役割を持って。  そういえば、店外活動は初めてだ。  だからこそ、話す機会のない紅乃木とこんなにお近づきになれた訳だが。  俺は自嘲気味に微笑んだ。 「あのさ」  耳元で声がした。  イヤホンじゃなくて紅乃木だ。 「なんで類沢は、みぃずきみたいの拾ったの?」  俺は耳を押さえて口を結ぶ。 「まだまだ時間はあるんだし、教えなよ」  抵抗虚しく、二人しかいないので諦めて手を下ろす。 「……俺もよくわかんないっていうか、借金返すだけに働かされてんのに妙に面倒みてもらって」 「やっぱりヤってんの?」  首を傾げると、紅乃木が小さな声で囁いた。 「っんな! そんなことあるわけないだろっ」 「そりゃそうだよな」  しれっと同調して、身を離す。  まだわからない。  この男に自分がどう思われているのか。  身に覚えがないこともないので、俺は赤くなってないか心配だった。 「あ。敬語鬱陶しいからやめて。おれ同い年だし」 「嘘ですよね」 「二十歳」 「ええっ」  叫びを手袋で塞がれる。  独特の香水の匂いがした。  紅乃木は睨みをきかせてから、俺が頷くのを満足げに眺めた。 「意外に多いんだよね、シエラには若い奴が」 「いつからやってるんですか」 「敬語。次言ったらナイフで痕つけちゃうよ?」 「あっ、えと。紅乃木」 「アカでいいよ。紅乃木とかまどろっこしい」  一枚一枚素顔が見えてくる。  店の中では雲の上のような存在だった類沢のライバル。  実際は少年らしさが残る自分と同じ青年だ。 「おれは高校卒業とホスト新入が同じ日だった」  それから腕を組んでわざとらしく眉をしかめる。 「貧乏だったから」  笑い飛ばしたい。  そんな空気が感じられた。  その頃を忘れて、今の財力に笑い声を上げたい。 「……強いな」 「おれが?」  肯定しようとしたとき、店内が騒がしくなった。 「仕事中だった」  紅乃木が苦笑いする。  店の中で、なにが起きているんだ。

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