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超絶マッハでヤバい状況です18

 紅乃木が膝をついた。  その現実を否定するように頭を振るが、同時に血も飛んだ。  殴られた衝撃でまだ視界が安定しないんだろう。  後ろ手でナイフをスイングするが当たらない。  その隙に秋倉が腕から逃れた。 「あー……うざったいな」  力無く、しかし殺意を込めて紅乃木は呟いた。  よろめいて、紫織の隣に倒れ込む。  秋倉は愉快そうに笑った。 「良かったじゃないか、客と寝られて」  紫織は気を失っていた。 「……秋倉、真」  類沢の声に振り返る。  さすがだ。  流石は外道。  ホストの顔だろうと頭だろうと躊躇がない。  だから嫌なんだ。 「なんだ、類沢? これは躾みたいなもんだろ」  千夏が指を鳴らす。  怒りの波が伝わってくる。  後ろの二人も同じだ。  そして、自分も。 「……そうだねぇ」  紅乃木が小さく嗤った。  その手はテーブルクロスに掛かっている。  蝋燭の乗ったクロスに。  意図に気づく前に、彼は勢いよくそれを引き下ろした。 「なっ」  ガタン。  布に引火した炎が燃え上がる。  床の絨毯を舐め、部屋中に広がった。  一気に赤く染まった壁。  全員の顔色が変わった。  紅乃木はそのまま力尽きる。 「ふざけたことを……っ」  千夏が動揺の中を駆けて紅乃木を助け起こす。  類沢はマイクに指令を出した。  他の二人は個室の中の、薬に溺れた客たちを救いに行った。  しかし、そこにいた人影に手が止まる。  出てきたのは、女性を抱えた男達。  肌は濡れ、行為の跡が残る裸体。 「まさか……」  この中で行われていたことがイヤでも脳にこびりつく。  密室。  薬の香り。  裸の男。 「蜜壷ですね」  連れの男が囁いた。 「別称か」 「はい」  類沢は口だけで笑う。  腐ってる。  客を薬漬けにして寝取る。  もはや犯罪の巣窟。 「早く火を消せっ」 「まずは逃げましょう、秋倉さん」 「馬鹿なことを言うな!」  入り口は類沢達が塞いでいる。  通す気は微塵にもない。  秋倉たちは目を合わせ、裏口に向かった。  丁度たどり着く瞬間に扉が開いた。 「類沢さんっ!」 「ありがと、瑞希」  押しのけようとした秋倉が固まる。  およそ四十人のシエラのホスト達が待ち構えていたから。  指令通りに。 「逃げ切れますかね? 秋倉、真」

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