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殺す勇気もない癖に04

「鬱陶しい」  類沢はすがりついてきた男の襟首を掴み上げ壁に叩きつけた。 「死んじゃうよ~」  雛谷が笑いながら言う。 「部下の管理も出来ないんなら辞めちゃえば、ホスト」 「……不届きで、スミマ……セン」  男を落として、上着の皺を正す。 「ガーデンの本部は関与してない。多分組織的な犯行じゃないんだろ」  マイクに伝えるとすぐに、イヤホンから声が聞こえた。 「瑞希ちゃんの位置特定したぜ」 「何故そんな呼び方なんだ……」 「固いこと言うな、吟じぃさん」  類沢は開きかけた口を閉じて、イヤホンを切った。  同じ会話を聞いていた雛谷がにまぁっと微笑む。 「瑞希ちゃんだって」  それには答えず、類沢は味のしない煙草をくわえた。  画面を見ながら溜め息を吐く。  見覚えある倉庫。  篠田は記憶を辿った。  確か、昔秋倉が使っていた。  廃業になってから、どうなったかと思っていたが、悪の巣窟には変わりないようだ。 「お疲れ様ですね」  篠田は耳元で囁いた人物を見上げる。 「なにをしてる、我円」  隣に伴を控えて、我円は静かに笑って会釈した。 「面白い男を捕まえましてね」 「男?」  二人の後ろから現れた青年。  篠田は首を傾げた。 「誰だ?」  この忙しいときに。  だが、我円がふざけるわけはない。  篠田はパソコンから離れて、青年と向き合った。 「名前は?」  地面を這っていた視線が上がる。  まだ子どもらしさがある。  二十歳前後か。 「……類沢の隣にいた奴を……助けないと」 「瑞希のことか?」 「ああ、そうだ。瑞希って名前だった」  篠田は頭痛をこらえて、青年を窺う。 「オレは……圭吾です」  真っ直ぐな瞳。  正気ではあるようだ。 「バーの息子らしいですよ? 瑞希を連れていった犯人を見たそうです」 「犯人を? 本当か」 「あいつはよく知ってる。店に来るから……」  篠田はその名前を聞いて、にわかに目を見開いた。

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