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随分未熟だったみたい12
確かに二週間、俺はれっきとしたホストだったし、河南はそれを知っている。
でもたった二週間だ。
俺はただの大学生。
そのつもりだったのに。
いつから外見までホストになってしまっていたんだろう。
「み、瑞希?」
頭を抱えた俺を指差す。
「俺は……」
「どうしたの」
そうだな。
河南は清楚な服だしキャバ嬢になんか見えたりしないもんな。
「あっ、すみません。キャラメルフローズンください。あとそのお冷や貸してくれますか?」
ピト。
「つめたっ」
額を刺されたような冷気に顔を上げる。
グラスを差し出し、河南はにこっとして首を傾けた。
「おかえりなさい」
「いや、ずっと……あ、いや」
「なぁに?」
無垢な顔。
「俺、変わった……?」
店員からキャラメルフローズンを受けとり、ストローをくわえる。
一口飲んでから、河南は首を振った。
縦に。
「格好よくなった」
喜べばいいのか。
付き合い当初からよく来た喫茶店。
テーブルの上で手は触れあう距離なのに繋げない。
なぜか繋げない。
なんだ、この後ろめたさ。
ー瑞希は最高だねー
思考が止まる。
河南が身を乗り出した。
「どしたの?」
そうだ。
そりゃ後ろめたいわけだ。
いや、どうなんだ。
あれは玲の薬のせいに違いはない。
けど類沢と寝たのは事実であって。
わからない。
これは浮気か。
なんなんだ。
「なにか隠してる」
「えっ」
「ねえ、瑞希はシエラで働いてるの」
あの店で借金を作ったからか。
河南は純粋に尋ねてるだけだ。
呼吸を整える。
ここでシエラじゃないって言ったらなにか変わるだろうか。
「そうだよ」
理由も勇気もない。
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