152 / 341

俺は戦力外ですか08

「給料受け取った後に、少しだけ愛さんが類沢さん見たじゃないですか」 「瑞希はよく気づくね」  いや。  あれほど印象的だったアイコンタクトはない。  そういいたくなるのを留める。  類沢は微笑んでから頬杖をついた。 「あいつの眼、凄かったでしょ」 「恐かったです」 「あははは。だよね。きっとね、言葉通りまだまだ上がるつもりなんだろう。僕を超えるまで。それまでは眼中にすら入れてなかったくせに、僕を意識し始めた。瑞希は直接言ってくれたけど、愛はあの眼だけで宣戦布告したんだ」  俺の名を出さないでほしい。  穴があったら入りたい。 「応えたんですか」 「ん? ああ、そうだね。さっさと来いってね」  数瞬開いた瞳孔。  手加減なんてしないって。  そう放つ。  俺は拓のことが気がかりになった。  たぶん、愛と共にトップを駆ける拓が。 「大丈夫だよ」 「へっ?」 「瑞希の友人を蹴落としたりしないから」  口を開けたまま止まってしまう。  なんで読めるんだ。  類沢は席を立ってソファに向かった。  煙草を片手に。  ギシリ。  窓を眺めて座る。  脚を組んで。  ああ、まただ。  写真を撮りたくなるほどの美しさ。  凄いな、本当に。  たった十年弱の差ってこんなに大きいのか。 「晃のことは、自分で対処してみる?」  おもむろに言われたから、認識するのに時間がかかった。  がたりと立ち上がる。 「なんで、それっ……」 「わかるよ。いくら脅されてる?」  晃が殴ったのは拓なのに。  アカが守ったとはいえ、俺との関係は言わなかったのに。  やはり読まれてるんだ。  ぎゅっと服の裾を握る。 「火傷だけなわけないよね」  傷跡に触れる。 「はい。俺が落としたルイ……晃さんへの注文だったじゃないですか。だから、百万弁償しろって」 「ふうん。馬鹿だね」  笑いながら。  類沢は晃を芯から悪人だとは思ってないんだろう。  俺もそれだから揺らぐ。  もちろん不当に金を払うのも、これ以上嫌がらせを受けるのも嫌だが。  類沢に守ってもらうのも違う気がする。 「自分でやります」 「いいね」  灰皿に煙草を押し付けて、そう答えた。  風呂を済ませて寝室に入る。  髪を乾かした類沢がベッドに座る俺を眺める。  下ろした髪を揺らして。 「なんですか」 「瑞希が№に入る日も来るのかなって」

ともだちにシェアしよう!