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俺は戦力外ですか07

 訊いてみたいが、類沢に訊いても蓮花の云う効果は無いように思えた。 「信じて警戒していたのは紅乃木と千夏。晃は高を括ってたんだろうね。ある意味予想通りって感じだった。これからが面白くなってくるだろうね」  なのに、全然楽しそうじゃない顔。  なんだろう。  類沢の眼に浮かぶ憂いは。  外じゃ話せない事って。  食べ終えて、グラスを貰う。  そういえばこの仕事後の飲みも抵抗なくなってきた。 「なんで派閥に入らないんですか」 「うん。言い方が悪かったよね。一度入った派閥を潰したことがあるんだ、愛は」 「潰……す?」  トポトポと。  ワインがグラスの中を滑る。  その赤さが目につく。  血みたいに。 「まとめて云うと、六人ぐらいの派閥だったんだけど愛以外が辞めたんだよ」 「なにがあったんですか」  言葉が途切れる。  唇を指でなぞる。  つい見てしまう。  綺麗な爪だなとか。  なんでパーツ全体が整ってるんだろうとか。  少し斜め下を見ながら考える眼とか。 「先入観を持ってほしくはないんだけどね……うん。言葉で人を操作するのが巧いんだ、愛は。本人は知らないそぶりだったけどね。元々協調性が薄い派閥を一気に集結させて、そこから呆気なく手を引いて壊したんだよ。見ていて爽快だったくらい」 「なんというか……ええ?」  想像してみても具体化できない。  人を操る。  手を下さずに分裂させる。  ゲームみたいだ。  映画に出てくるような。  それを愉しんで傍観してる類沢だけは容易に浮かぶ。  不思議なことに。 「止めなかったんですか」 「新入りに壊される程度の派閥だったら切りたかったからね。丁度よかったよ」  だんだん低くなる声に寒気がする。  トップとしての類沢は、余りに冷たい。 「瑞希が入ってくる前に新入り四人切ったんだよ」 「それは、どうして」 「全員同じことを言った。愛を辞めさせてくれって。僕は代わりにこう答えた。愛より稼いだら、いいよって」  なんだか、違う響きに聞こえてしまう。  愛より稼ぐ。  ある意味格好良すぎる名言だ。 「で、稼げなかったんですか」 「そう」  だから切った。  当たり前でしょ。  そんな裏の声が聞こえた。  グラスに口を付ける。  飲む間、類沢を見られなかった。

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