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俺は戦力外ですか06

 リビングに入ってからやっと口を開く。 「愛は、どの派閥にも入ってなくてね。まだシエラに来て二か月なんだけど」  二か月。  それで№に入ったってこと。  煙草を咥えながらキッチンに入る。  冷蔵庫から作り置きのラザニアを取り出して、盛り付ける。  一人分。  俺のだけ。  差し出されたそれを受け取る。  類沢はワインのボトルを持ってきて、テーブルの席に同時に座った。 「話したことはある?」 「ないです。顔もうろ覚えくらいで」 「そう。まあ、そうだろうね。愛は誰にも仲間意識を持つ気はなくて、よく篠田とぶつかるんだ。一人だけであれだけ客を集めたってのも結構不審がられててね。噂だとどこかの店のスパイじゃないかって」 「スパイ!?」  俺はスプーンから具を落としてしまう。  撥ねた液をティッシュで拭う。  服に付かなくてよかった。 「その言い方だと現実味ないけどね。他店の偵察隊。だから客も協力者って形で着くだろうし、あえての孤立も意味がわかる」 「類沢さんはどう思ってるんですか」  グラスを指で叩く。  一息ついて、机にもたれる。 「どうだろうねー。面接に立ち会ったときにさ、必死だったんだよ。こう、今すぐ金が必要で、何をしてでも稼いでやるって。珍しかったね。篠田はその態度が気に入って採用した。驚いたよ、それからは。僕は篠田の集計を見せてもらってたんだけど、二週間で上位に入ってきてたね」 「異例ですか」 「今の瑞希が客を二十人抱えてるって想像してみて」 「……凄いですね」  客を取る。  ホストの基本にして最重要課題。  俺は無知に近くて、客寄せすら掴めない。  コトン。  ワインを飲み干してからふっと笑う。 「一度強引に呑みに連れて行ったことがあったんだけど、一匹狼っていう雰囲気は仮面なんだなって思ったね。実際は繊細で、よく周りを把握してる」 「稼ぎたい理由ってなんだったんですか」 「それだけは言えないの一点張り。借金かなとは思ってたけど、どうにも切羽詰ってるんだよね。それでさ、今夜ざわついてたのは一か月前に愛が宣言したんだ。来月№に入るって。大抵笑い飛ばしたよ。その時点での実績は十六番。そこから五番に入るなんて、って」  蓮花の言葉が浮かぶ。 -春哉が……なんでこの店開いたか聞いてみなさい? それがわかったら、NO.4には登れるわ-  それがわかったんだろうか。

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