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最悪の褒め言葉です11
アパートに着いて車から降りると、部屋の前で扉にもたれていた拓がダッシュで駆け寄り俺の両肩を掴んだ。
「医者呼んだんだっ。けどまだ来なくて……覚まさないんだよ! 忍が……何回揺すっても! いきなり倒れててっ、ワケわかんなくて。どうすりゃ……くっそ!」
薄手のTシャツにスキニーパンツ。
多分、寝間着のまま。
泣き明かしたような充血した眼。
「拓……」
なんも言えなかった。
「今、悠達呼んだから」
携帯を片手にあとからやって来た類沢が言う。
「容態見せて」
拓は瞬きもせずに頷いた。
開いたカーテンから陽光が降り注ぐ。
そんな明るい室内。
俺は違和感に押し潰されそうだった。
だって、ベッドに横たわる忍に余りに似合わない明るさだったから。
元から静かな寝息だった。
けれど、今は生きている確証すら危ういほどの静寂を帯びた寝顔にぞわぞわする。
「何があったの?」
類沢が忍の隣に膝を付きながら問う。
「昼過ぎに、忍がなんかおかしくて……口が回らないって言うか……それで寝るって言ってカーテン閉めに歩き出したと思ったら倒れて。いきなりで……」
拓が口を覆う。
ハッハッと過呼吸のような息遣いをして。
焦点が定まってない。
俺はぎゅっとその手を握った。
「なにか持病は?」
「ないっ。そんなん……聞いたこと……」
拓が無意識に爪を立ててきた。
痛みが駆けるが、俺は顔に出さずに握り続けた。
「何回呼んでも起きなくて……初めは眠ったかと思ったけど違って」
「酒は?」
「はい?」
「飲んだ?」
拓が頭に手を当てて目を見開いたまま首をふる。
「忍のやつ、店で飲む量がヤバイからって休みの日は一切飲まなくて」
「雛谷の店だよね。じゃあ、それは原因じゃないか……アレルギーは?」
「ないはずです」
そこで玄関からチャイムが響いた。
拓より先に類沢が向かう。
悠だった。
仕事中だったのか、白衣のまま。
「患者は?」
「早いね。こっちに居る」
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