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いくら積んでもあげない15

 だが彼は涼しい顔のまま俺を見下した。 「原因はお前だけどな。前回も派手に暴れてくれたそうじゃないか。蜜壺は結構な規模の商売をしていたらしいが……倉庫での八人集の件もお前が絡んでいるんだろう? たった一か月でこうも面倒事を引き起こす輩も珍しい」 「忍をダシに……っ、使いやがったのか!?」 「好いタイミングで病気になってくれたものだ。彼には最高の治療を施すつもりだよ。お蔭で秋倉から数十倍の金が入るしな。だが、そこから先は知る必要はないだろ」 「類沢さんにっ、何する気だ」  身を起そうとした瞬間肩を思い切り地面に抑えつけられた。  衝撃に歯を食いしばる。  でなければ悔しさに涙まで溢れそうだった。 「今から身をもって同じ体験をすればいい。彼が幼少期に扱われていたように」  ぞくりと悪寒が走った。  あまりにやさしい声で言うものだから、おぞましい言葉にも関わらず頷いてしまいそうになったのだ。  身じろぎしても、全く抜け出せそうにない。  心拍が早くなる。  空気が変わったんだ。  今までの、遊ばれているようなやりとりが恋しくなるほどに。  脚の間に割り入れられていた鵜亥の膝が付け根まで押し上げられていく。  びくりと全身が反応する。 「……秋倉に犯された類沢が、今度はお前を犯したらしいな?」 「なんで……それ」  頭が真っ白になる。  なんて言った?  なんて言ったんだ、この男。  口を耳元に近づけて、低い声で囁く。 「奴はどう愛撫する? 教えてみろ」  かあっと血が昇る。 「なっ」 「男を抱く術は教え込まれてたんだろ? 私と違って大勢にヤらせるらしいからな。さぞテクニックも凄いんじゃないのか?」  こいつ……  類沢さんを侮辱してる。  あの、歌舞伎町№1の男を。  いや、それだけじゃない。  この一か月で俺は色んな類沢さんを見てきた。  近くで。  こんな奴に、こんな風に言われるような人じゃない。  ふざけんな。  バツンッと破られたシャツのボタンが弾け飛ぶ。  ふざけんな……  鵜亥の指が胸元に入ってくる。  なんで俺は、こんなクズ相手に好きにやられてるんだよ。  せめて、言い返せよ。  言い負かせよ。  涙が目尻から零れる。 「……くそ」  どうして。  なんで、こんなにも、体が動かないんだ。  なんで、こんなにも、俺はこの男に怯えているんだよ。

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