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どんな手でも使いますよ13
秋倉がふっと笑う。
「どうでも、か」
「篠田の元について随分経つからね。それに……」
言葉を一旦区切って、乾いた唇を舐める。
「それに?」
ハンドルを切りながら秋倉が先を促す。
「貴方が直接僕に手を出したのって、三回だけだし。殺したいくらい憎いのはあの小木とか、他のクズたちの方だからね」
「三回、だけというか」
「一度脱走失敗した時、脚を切り落とそうと提案した小木を止めたこともありましたし」
「そんなこともあったな。あいつは実用性しか考えないから」
「さっき篠田に絞められただろうけど」
「首にナイフか頭に銃でも突きつけながら無理やり電話させられたんだろうな」
ああ、その画は想像に容易い。
「後でどこにいるか教えて貰おうかな」
「あいつは足を洗った。見逃してやれ」
「不思議な言い方しますね」
「何がだ?」
「まるでこれからも僕が自由に動けるかのような」
「そうか?」
何を考えているのか。
三分ほどの無言の後、秋倉が問いかけるように言った。
「七夕に願ったことが、クリスマスに叶ったとして、人はそれで満足するか?」
「……満足しないならそれだけの願いだったんじゃない」
「なるほど」
「あとは願いは同じでもその過程が望んでいないものだったなら、満足することなんてないだろうね」
「……っく」
「何かおかしい?」
「饒舌になったな、雅」
「その親しげな口調は変わらないね、虫唾が走るよ」
「悪いな、本性だから直らないんだ」
バックでどこかに駐車される。
窓を見て、感覚が消え去った。
白い壁。
周りを囲む森林。
記憶の中のあの、あの人のいた空間。
いや、違う。
似ているだけだ。
ここは、あそこじゃない。
「……い、おい」
凝視したまま動かない類沢の肩を秋倉が掴む。
「おい」
やっと振り返った表情を見て、秋倉が動揺する。
一度として涙を見せたことの無かった蒼い眼に、涙が滲んでいたのだ。
「お前……」
だが、すぐに数度の瞬きで消え去る。
「随分かかりましたね、ここ何処です?」
機械のように、安定した声で。
そのせいか、言葉を一瞬忘れてしまった。
「あ、ああ。秋倉邸だ」
あえておどけてみせる。
「趣味悪いですね……」
「白は嫌いか」
それには答えず車を降ろされる。
ああ、悪趣味だよ本当に。
ここからは逃げれないじゃないか。
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