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どんな手でも使いますよ14

 さて。  篠田は後部座席の戒と巧をミラーで見ながら白い息を吐く。  戒は年齢は雅より少し下か?  巧は瑞希より少し上。  結局年齢さえも、正体もよくわかっていない。  というよりも、闇の運び屋をやっていたのだから知れる訳がない。  聞くつもりもないが。  愛は万が一のため別の場所を任せた。  雅の過去に偏見なく、シエラで信頼できるのはあいつくらいだ。  そこで篠田はふっと自身を笑う。  蓮花に拷問させておいて信頼とはよく言ったものだ。  そういえば……  あの時、蓮花に言われたな。 ―たぶん、あの子力づくじゃなくても吐いたと思うわ。今の組織に不信感でもあるか知らないけど、あんたの下にいるうちに変わったのかもね―  変わった、か。  吸殻を窓から落としながら、信号を眺める。  手前から、赤、赤、青、青。  あまり、よくない並びだな。  ハンドルを切って右折レーンに移動する。  中道を通っていくか。 「瑞希さんて、どんな人なんですか」 「あ?」  突然の発言に振り向く。 「どういう意味だ」 「あの、鵜亥さんて……相当気に入った人じゃないと、傍に置こうとかしないんですよ。大抵売り物にしかしないっていうか……」 「お前みたいな?」 「やめろ、そういう言い方」  すぐに殺気立つボディガードだ。  身を乗り出した戒を巧が引き戻す。  篠田はハンドルを切りながら溜息を吐いた。 「あいつは、人を惹きつけるガキだよ」  その一言にびくんと巧が此方を向く。 「人を……」 「つってもまあ、特に変人をだな。男女関係なく。それも仕事さえなおざりにするくらい麻薬級にハメちまうらしい。歌舞伎町にはあいつのファンが溢れてるだろうさ。同業者は数え切れない」  脳裏にくっきりと浮かんでいるのは八人集と蓮花だ。 「だが雇った理由はそれじゃあない。たった一度、シエラに来ることさえなければあいつは大学生のままだっただろうな」  そう考えると、雅は河南とかいうあの小娘に感謝するべきじゃないのか。  いや、今となっては恋敵か。  強力な。 「お前もそうだったか知らないが、たまたま鵜亥の眼に入ってしまった。それがあいつの不幸だろう」 「戒、瑞希になら気が合うかもしれへんな」 「……そうか?」 「焼きもち妬かれるぞ、やめとけ」 「えっ」 「黙れ。あと、お前もすぐ赤くなるな」 「なってへんわ!」

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