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夢から覚めました15

 意味ありげに俺を一瞥した河南が含み笑いをする。 「ん?」 「んーん。なんでもない」  半時間もしないうちに料理が全てなくなり、四人はくつろいで雑談に花を咲かせていた。 「民俗学てんなことやってんの」 「うん。フィールドワークとかね、地方に色々行って」 「大学かあ……」  拓が真剣な目になる。 「どした」 「忍は大学行ったら何学部に入ったのかなあって。ルックス的には法学部だろー。でも白衣が見たいから物理とか医学系に行って欲しい気もするし……」  ぽかんとした忍が頬を緩ませて拓の頭をはたく。 「なーに真面目にアホ言ってんだよ」 「オレは? どこ入ってそう?」 「ヒマ経」 「瑞希!」 「ああ、確かに」  河南もつられて四人で笑い合う。  なんだろう。  久しぶりだった。  こんなくだらない会話。  気兼ねない会話。  本来いるべき場所。  遠い眼をした俺を河南がじっと見つめる。 「類沢さんに、会いたい?」  空気が一変する。  俺は言葉に詰まった。  拓と忍も神妙に口を結んでいる。 「いや……わかんね。あの人結局自分でどっか行っちゃったわけで、俺にはどうすることも出来ないし……ちがう、なんだろ……会いたい? そりゃ会いたい。でも会った先が何も想像つかないんだ」  きゅっと河南が俺の手を握った。  小さな手。  女の子の手。  守ろうとしていた手。  河南の手。 「夢だよね」 「え?」 「類沢さんて、夢みたいな存在だと思う。うまく言えないけど……初めて歌舞伎町でさ、瑞希より先に姿を見たとき思ったの。掴めないなあって。でも惹かれるの。不思議だよね」 「夢……」  言い得ているかもしれない。  たまにあの人が本当に人間なのかって感じるときもある。 「あの人、まだ戻ってねえの」  拓が訊きづらそうに呟く。 「……ああ。弦宮って人と姿を消したっきり。チーフにもわからないって」 「そんな簡単に辞められると思わなかった……今はじゃあ、アカと千夏が?」 「一応。でも類沢さん目当ての客は来なくなった……当たり前だけどな」  トップ不在。  瞬く間に街中に情報は知れ渡った。  瀬々晃や愛を除けばトップ集団は二十歳前後のシエラにとって、彼の不在は痛すぎるものだった。 「そういや……愛は元気?」 「ああ。色々聞いたけど」  鵜亥。  かつての愛の上司は今どこにいるんだろう。

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