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夢から覚めました22

 お台場の駅前広場の一角、光と水のオブジェとやらがある前で蓮花は腕を組み、ある人物を待っていた。  待ち合わせは五分後。  夕方のダイバーシティにはカップルや家族連れが多く歩いていた。  オブジェから注ぐミストを眺めていると、後ろから声が掛けられた。 「お待たせ~」 「遅いわよ、鏡子」 「まだ時間前だけど」  栗鷹鏡子は意地悪く微笑んだ。  シンプルなレザーコートと黒のタイトパンツを履きこなす友人に蓮花も顔を緩ませる。  大人の女性。  二人には正にこの代名詞がよく似合った。  アラウンドサーティ。  上手く年齢通りに生きているとは思っている。 「悠は? 仕事?」 「これよこれ」  そう言ってビリヤードの棒をジェスチャーする。  蓮花はピアスを指で弄りながら笑った。 「また、か」 「また、よ」 「患者も放って」 「まあシエラの拓ちゃんも退院したし? 患者は今はいないからねえ」 「そっか。もうそんなに経つのね。一か月?」  夜の冷たい風に身を抱きしめて、二人は足早に喫茶店に向かう。  入ると同時にコーヒーを二つ注文し、一番奥の席に着く。  腰を下ろすとすぐにコーヒーが運ばれてきた。 「失礼致します」  胡桃と名の書かれたプレートを胸に、ウエイトレスは一礼する。  下がろうとした彼女の手首を鏡子が掴む。  その手を一瞥し、問うような眼。 「軽井沢から戻ってきた東京一の情報屋さん。あんたにお聞きしたいことがあるの」  蓮花も足を組みながらじっと見つめる。 「なんでしょうか」  ケイすら掴めない弦宮麻耶の行方。  大人の二人は独自のルートで見つけようと一か月情報屋を訪ね廻っていた。  最終的に辿り着いたのがここだった。  彼女だった。 「ルシェモンブランを二つお願い」  そう言いながら鏡子はメモを胡桃に渡した。  それを素早く胸ポケットに入れ、カウンターに戻る。  ケーキの並んだウィンドウを素通りし、彼女はスタッフオンリーの扉を抜けて行った。  扉が閉まるまで見送ってから、鏡子が溜息を吐く。 「なあに……あれ? タメぐらいのはずよね」 「こっちまで冷や汗掻いちゃったわ」  ふふ、と苦笑いし合う。 「ここもダメだったらどうする?」 「やめて鏡子」 「なんで蓮花がここまでするの?」 「……なんでかしらね」  親友の顔をじっと見て、鏡子が呟く。 「チェリーボーイ大人気ね」

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