12 / 18
ハルと紅葉(クレハ)
懐中電灯の光が瓦礫の隙間から入ってきた。
「お、おい!大丈夫か!」
「この障害物に挟まれてるんだ!おい、この壁上げるぞ!」
掛け声と共に救助作業が始まった。
1時間後、まずハルが救出された。
「大丈夫か?無事で良かった!怪我はないか?」
「僕は大丈夫です。他に人はいませんでしたか?」
「あぁ、もう1人男性を先程救助した。脚を怪我していたが軽傷だ。問題ない。」
あの人だ。無事で良かったとハルは胸を撫で下ろした。
辺りを見渡すと、建物は物の見事に崩落しており、改めて自分たちが助かったのは奇跡なのだと感じた。
「ふぅ…やれやれ、助かりました。ありがとう。ハル、平気か?」
背後から紅葉の声がした。
「平気…だよ。」
ハルは背を向けたまま応えた。
「ハル、根暗眼鏡陰キャ君だなんて言って悪かった。悲鳴をあげたりなんてしないから、こっちを向いてほしい。」
紅葉がハルに近付いて言った。
「クレハの声量で悲鳴なんて上げられたらたまんねぇよ…」
冗談っぽく言いながら、ハルは紅葉の方を向く。
そして、互いに見合った。
「…驚いた。ハル、こんなに可愛いなんて…」
「…クレハ、こんなかっこよかったんだ……」
クレハは背が高く、モデルのようにスタイルが良かった。
黒髪で端正な顔立ち。
身長差から、ハルは見上げる形となる。
救助隊の懐中電灯の明かりで周りが妙にチカチカと明るい。
眩しく照らす光の中、ハルとクレハは暫くの間、無言で向かい合っていた。
ともだちにシェアしよう!