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ハルと紅葉(クレハ)

懐中電灯の光が瓦礫の隙間から入ってきた。 「お、おい!大丈夫か!」 「この障害物に挟まれてるんだ!おい、この壁上げるぞ!」 掛け声と共に救助作業が始まった。 1時間後、まずハルが救出された。 「大丈夫か?無事で良かった!怪我はないか?」 「僕は大丈夫です。他に人はいませんでしたか?」 「あぁ、もう1人男性を先程救助した。脚を怪我していたが軽傷だ。問題ない。」 あの人だ。無事で良かったとハルは胸を撫で下ろした。 辺りを見渡すと、建物は物の見事に崩落しており、改めて自分たちが助かったのは奇跡なのだと感じた。 「ふぅ…やれやれ、助かりました。ありがとう。ハル、平気か?」 背後から紅葉の声がした。 「平気…だよ。」 ハルは背を向けたまま応えた。 「ハル、根暗眼鏡陰キャ君だなんて言って悪かった。悲鳴をあげたりなんてしないから、こっちを向いてほしい。」 紅葉がハルに近付いて言った。 「クレハの声量で悲鳴なんて上げられたらたまんねぇよ…」 冗談っぽく言いながら、ハルは紅葉の方を向く。 そして、互いに見合った。 「…驚いた。ハル、こんなに可愛いなんて…」 「…クレハ、こんなかっこよかったんだ……」 クレハは背が高く、モデルのようにスタイルが良かった。 黒髪で端正な顔立ち。 身長差から、ハルは見上げる形となる。 救助隊の懐中電灯の明かりで周りが妙にチカチカと明るい。 眩しく照らす光の中、ハルとクレハは暫くの間、無言で向かい合っていた。

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