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匙加減

「は…?何言ってんだよ…恋の悩みなんかねーよ…!」 ハルは急に少し慌てた様子で言った。 「おやおや、恋煩いかい?美少年。」 華月は、この手の話が大好きという様子だった。 「別に…そんなんじゃ…ありません…」 ハルはふいっとそっぽを向いた。その顔はまた少し赤らんでいた。 華月とブラウンは顔を見合わせると少し笑った。 「隠すことないじゃない。羅夢君くらいの年頃の子は恋くらいするわよ。私なんて凄かったんだから。」 「華月は男を振り回しそうですね。」 「何よ、失礼ね。」 華月とブラウンが談笑していると、ハルは「…僕もう恋愛とかする気ねーから…」と小さく言った。 「なになに美少年、随分闇が深そうじゃない。」 「そんな事ない…っす…」 華月の言葉にハルは小さく答えた。 「"気が滅入ってる時はほおづえをつくといい。腕は役に立つのが嬉しいのだから。"」 ブラウンが言った。 「誰の言葉?」 「チャーリーブラウンですよ。」 「…ブラウンさんの苗字ってチャーリーだったんだ…」 「ハル…いや羅夢。それはボケですか?天然ですか?」 ハルはブラウンの質問には答えず、「そろそろ行くよ。ブラウンさん、華月さん、また。」と言うとそそくさと店を出た。 「変わった子ねぇ。」と華月が言った。 「私は彼が子供の頃から見ていますが、なかなか生い立ちが複雑でして…。13歳の頃に親に捨てられて街をさまよっていたところを保護したのがきっかけです。」 「それじゃあ組織の施設で育ったのね。」 「そうです。親の愛情を知らないからなのか、依存体質なところがあります。恋愛面では辛い思い出が多いみたいですよ。」 「マスカラも口紅もちょっとした匙加減で変わるの、人生もきっと同じよねぇ。」 「…誰の言葉ですか?」 「私よ。」

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