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もしかして、俺詰んでる?
と、意気込んだはいいが特に何もできることはなく。
来栖に連れられ他の妖と話したり。
目の前で変化の術見せてもらって遊んだり。
表に声をかけられるまで子供の妖たちと楽しく話しただけで終わった。
そして楽しかったなー、と思いながら表の家に戻りそのまま眠って……
何してんだよ俺!
こう言うパーティーとかはさ、ゲームでさ情報収集するイベント発生するやつじゃん。
なんで俺はみすみすチャンスを逃したんだよ。
うがー、と自分の頭を掻きむしる。
なんて悩んでいたって状況は好転しない。
まず俺がすべきことは
・どうやって俺は人間の世界に入り込んだのか
・人間と妖の世界を繋ぐ馬車を探すこと
ぱっと考えてこのぐらいだろう。
俺の前が影が落ちる。
表 がたくさんの本を抱えて俺の前に立っている。
「どうした? そのように悩ましげな顔して」
「いやさ、人間の世界に戻るにはどうしたらいいかなーって考えててさ」
「ふむ、わしも今調べておったが……
やはりお互いの世界は別れており、繋いでいた扉は全てわからぬように閉ざされておる。
故に迷い込むことなどない、となっておるんじゃよ」
表は妖の世界で人間と妖について研究しているらしい。
世界の行き来の仕方とか生態とかについて。
そんな表なら戻る方法知ってるんじゃ、って思うじゃん?
けど、人間がこっちに迷い込んだりすることについては未だよくわかってないらしい。
表としても俺みたいなやつは珍しいからこれをきっかけに原因を探せたらって考えているらしい。
二人してうーんと悩む。
これ、完全に詰んでね?
……あ、そうだ!
「なあ、表。俺ちょっと出かけてきてもいい?
俺がさ、最初に入ってきたとこあるじゃんか、あそこに行きたいんだ。
何かわかることとかあるかもしれないし」
「うーむ、そこに関してはわしがもう調べてきたが……
人間が行くことで何か起こるのかもしれんしのう。
わしもついていきたいがやらねばならぬこともある故、一人にするのは不安じゃの。
おおそうじゃ!」
表がふっと姿を消したかと思うと服を抱えて現れる。
「お主の服は人間の世界のもの故目立つからわしの服に着替えるが良い。
後はこれじゃ」
そう言って差し出されたのは首輪。
犬とかの首につけるあれだ。
「これはの、首につけて使うんじゃがな。
この飾りの部分がわしの家と繋がっておる。戻ってきたくなればここを触ってわしの名前を呼べばすぐに戻ってこられる、と言う代物じゃ」
「ほえー便利なもんだな」
「後は、この人間はわしのものじゃ、という証にもなるからの。
故に」
『絶対に外してはいけんぞ』
赤い瞳で顔を覗かれ言われる。
俺はこくこくと頭を上下に振る。
表が俺の首に首輪を巻く。
「もしも、もしも人間の世界に戻れたなら見つからなそうな場所に置いといて欲しいんじゃ。
何かに使えるかもしれぬしな」
「ああ、うん。それぐらい全然いいけど」
「後は知らぬ妖についていかぬこと、主人の妖は誰だと聞かれれば表と答えるんじゃぞ。
後は買い食いとかはせぬように、それと」
「そんな子供じゃねえよ! 行って何もなければこの首輪の飾り触って名前呼んで戻ってくればいいんだろ」
「うむ、気をつけて行ってくるんじゃぞ」
過保護な表に送り出されて迷い込んだ時以来初めて一人で妖の世界へ踏み出した。
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