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第29話
体がだるい。
「ぅ···」
朝起きてすぐ、隣に眠っていた志乃が俺の呻き声に反応して目を覚ました。
「痛むのか」
「···痛いし、辛い。やっぱりもう二度とセックスしたくない」
「それは無理だな」
腰を撫でられる。その優しい手つきに流されそうになる。
「志乃」
「あ?」
「仕事は。」
「今何時だと思ってんだ」
そう言われて時計を見ると朝の4時。
なんでこんな時間に目が覚めたんだろう。
「起こしてごめんなさい」
「別にいい。今日は10時には家を出る。お前は家で大人しくしてろ」
「わかってるよ。いちいちうるさいな」
ふん、と志乃に背中を見せると抱きしめられる。
「拗ねるな、面倒臭い」
「拗ねてない。やっぱりあんたは嫌い。」
「あんたって言うな。名前で呼べ」
「うるさい」
そう言うと志乃が俺の体をグイッと後ろに倒し、俺の腹の上に跨ってくる。
「何っ!」
「調子に乗るなよ」
「············」
突然怒り出す志乃。
沸点がよくわからなくて志乃に手を伸ばしその頬に触れる。
「何で怒るの」
「···わかんねえのかよ」
「わかる気もないよ。でも俺だけそうやって怒られて怯えるのは嫌だ。···志乃は俺のこと好きなの?」
「···知らねえ」
「じゃあ、どうするにしても、俺を意のままに動かしたいなら、嫌われないようにせいぜい怯えてろ」
「あ?」
「退いて。重たい。寝る」
そう言って目を閉じる。舌打ちが聞こえたかと思えば志乃は上から退いてくれた。
そして怒ってるくせに俺を抱きしめてくる。
寝ると言った手前、話すことも面倒で俺はそのまままた眠りに落ちたのだった。
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