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俺とアキ 1
ビューン、と真冬の冷めきった凍えるような風が容赦なく俺の身体に突き刺さる。
「ううっ⋯⋯!!さむ、すぎて無理⋯かも⋯⋯!」
ちーんと滴る鼻水をぐすりと啜り直し、外に出た事を今更後悔してしまった。肌を刺す様に鋭く冷たい風が全身を包み込み、一気に俺の体温を奪い去っていく。
ドアを開けた瞬間に感じたのだ、これはなかなかやばいヤツだと。
けど、まあ⋯あの程度の距離ならきっと耐えられる。
少しだけ、ちょっと我慢さえしたらすぐに着くから。
勇気を振り絞って1歩、進み出したは良いものの⋯⋯しかしこれまた⋯⋯寒すぎる。
後ろを振り返ってみれば、もう既に後戻りをしてしまう事も躊躇してしまうほどに中途半端な距離まで来てしまったみたいだ。
そして吹き荒れる風に晒される無防備な身体。やがて寒さに弱い俺の心の中がポキッ、と折れる音まで聞こえてしまった。
「はぁ〜〜⋯⋯急がなきゃ、いけないのに…」
┈┈┈┈┈
「ね〜え、アキ!!俺ならぜんっぜん大丈夫なんだってばぁ!ほら、見て!熱もちゃんと下がってるの!」
「⋯⋯んなカッスカスの声でよく言えたもんだわ。残念だな、用が済んだならさっさと戻る」
「はぁああ?もう疲れたんだけどぉ…昨日からずぅ〜っと寝てばっかでつまんない。体が固まって石みたいに動かなくなったらどうすんの??」
「その時も世話してやるから安心しろ。じゃあおやすみ。」
ぶーぶー、と愚痴を漏らしても、平熱を示す体温計を目の前に掲げても、一言たりとも聞く耳を持たない所か視線さえ合わせてくれない。何もかも上手くいかない現実に嫌気がさし、俺は大きなため息をひとつ、はぁと吐き出した。
急な高熱でぶっ倒れてしまった俺を朝まで丁寧に看病してくれたアキには感謝してもしつくせない位、十分に有難く思っている。頭の中では分かっているのだ。
俺のために自分の時間を割いてまで尽くしてくれるそんなアキの事を俺は大好きだ。もちろん友達としてではなく、立派な恋愛感情として。それはお互いに抱いてる感情だった。
俺の一目惚れから始まったこの関係はいつしか友達を超えて恋人同士という関係にまで発展している。
いつからそんな感じになったのかは、正直よく覚えてない。ほんとに気付いたら、俺のそばにはアキが居ることが当たり前の日常に変わっていた。
とは言ってもさぁ〜⋯!!俺にだって安静にしてる限度というものがある。元々じっとしてられない性格なんだけど。それにいつまでもベッドで大人しく寝てろなんて、無理に決まってる!
だって、ほんとに熱もないし元気だってモリモリなんだよ。食欲もあるしよく眠れて、性欲もばっちり。
まあ⋯⋯ただ、声だけはカスカスかもしれない。それは⋯⋯そればかりは勘弁して欲しい。病み上がりみたいなそんな感じだから。
さすがにベッド生活3日目ともなると身体がムズムズして仕方がない。自由に動き回って、自由に好きなことがしたい。
少しだけで良いから外に出て空気だけでも吸わせて欲しい。
そうやって朝から何度も交渉しているが、それでも俺の目の前に居る彼ははそれを一切許さない。
昨日から口を開けば必ず出てくる言葉は「寝ろ」の一択。
過保護すぎませんかねえ〜?俺だってそんな小さい子どもでも無いし寧ろ立派な17歳なんです〜。自分のことくらい自分で⋯⋯⋯出来ないから、こうしてぶっ倒れて看病してもらってるんだっけか。
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