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25.残酷(2)*

「アッ……く、ぁ」 「なるほど。かなりキツキツだけど奥まで入るね。広がりやすくていい具合だ」 「う……ぐ、い、た」 「痛い? そっかそっか、でも大丈夫だよ、裂けてないから。それにもうこんなに濡れてるよ? ほーら、ここを弄るたびにぐちゅぐちゅって鳴ってる。綺麗な音だ。でもちょっと水っぽいかな? 忌人は最初からとろとろなんだよ」 「突っ込んでれば勝手に粘着質になる。途中で音が変わるからな、すぐにわかる」 「へえ、そうなんだ。ふふ、早く使いたいなぁ」  リョウヤが顔を背け、ぶんと頭を振って髪で顔を隠してしまった。  好き勝手なことを言われている屈辱にだろうか、それともまじまじと秘部を観察されることが耐えられないのか。どちらにせよ、これほどまでに弱々しく見えるリョウヤの姿は珍しかった。  くつりと喉を震わせてほくそ笑む。  つい先ほど、アレクシスに盛大な啖呵を切った奴だとは思えない。 「おい、しっかりと足を開け稀人。中をもっとマティアスに見せてやれ」  言葉もなくふるりと首を振る哀れな仕草に、どんどん冷酷になれる。衆人環視の中で暴行されたこともあるというのに、性的な視線に晒されながらの開脚はよっぽど屈辱的らしい。いいことを知った。  むくむくと膨れ上がってくるのは支配欲だ。リョウヤの反抗心を叩き潰すのが目的だったが、小生意気な稀人を2人がかりでいたぶるという行為に、なんだかんだとアレクシスも興奮しているらしかった。   「聞け。言うことを聞かなければサロンに連れて行くぞ。どこぞの趣味のいい伯爵が主催しているサロンにな」  こちらを見ようとしない柔らかな頬をわし掴みにし、小刻みに揺すって脅しをかける。 「ぅ……」 「そこで何をされるのか、知っているか? 見ず知らずの参加者のものを上でも下でも咥えさせられ続けるんだ。酒も薬も玩具もなんでもありだからな、もちろん一日じゃあ終わらない……マティアス、おまえ一度だけ参加をしたと言っていたな。他にはどんなショーがあった」 「えーっと……ああ! そういえば忌人同士の交配ショーなんてのもあったねぇ。兄弟や友人同士を交わらせるんだ。あとは生贄を2人だけ決めて有料会員だけで弄ぶとかね」  リョウヤの喉ぼとけがごくりと上下した。ここから見える横顔は蒼白だ。 「どっちが先に狂うのかを賭けるんだ。あの時は私が一人勝ちしたよ。いやぁ爽快だった」 「見る目があるな」 「だろう? 一番強がりな子だったからね、坊やみたいにさ」  マティアスがするするとリョウヤの額を優しく撫で、顔を隠している髪を梳いた。 「そういう子は一度ぷつんと切れたら一気に堕ちるからねぇ、うまい具合にその通りになったんだ……壊れた子が窓から飛び降りようとした瞬間が一番盛り上がったっけな、懐かしい」  本当に懐かしそうに、マティアスが目を細めた。 「ちなみにその子は地面にしたたか背中を打ち付けて半身不随になっちゃってね、抵抗しない性奴隷……いや、もうあれは生きてる自慰道具かな? そういうのを求めてた貴族に高値で売られたよ。3年くらいで死んじゃったらしいけど……坊やがあのサロンに参加するなら、もちろん坊やに賭けてあげるよ」 「だ、そうだ。どうだ? 貴様もそこでお披露目されたいか」  乱暴に手を離して顔を解放する。マティアスに髪を全てどかされて、リョウヤの横顔が露わになった。その目はどこを見ているのかぼうっと壁、いや窓に注がれている。常に黒目に映り込んでいた光も薄い。  飛び降りたいのだろうか、マティアスの言う半身不随になった挙句、搾取されて死に絶えた忌人と同じように。  だが、逃してやる気はさらさらない。 「──早くしろ。人間様に気持ちよく穴を使って頂くことが、体と引き換えに自由を得た性奴隷の仕事だ」    最後に付け加えたセリフは相当堪えたらしい。ふっと、諦めたようにリョウヤが目を閉じた。強張る両足が徐々に開いていく。だが、まだまだ中途半端だ。 「もっとだ。開ききれ」  膝裏を揺すって促せば、観念したのか最後まで足を広げた。 「……いいねぇ、奥がちゃんと見える。蛙みたいだ」  ぺろりと、マティアスが唇を舐めた。アレクシスは高みから、みっともなく脚を広げた無様な恰好を鼻で嗤った。  マティアスの言う通り、これはまるで解剖された蛙の標本だ。

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