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27.不可解な感情(4)*

「へえ、すごいな。すぐにまた中で勃起したの?」 「……、ああ」 「うわ、結合部の膨れ具合もすごく硬いし、ホントにいい買い物をしたねぇ。忌人だともっと返しは柔らかいから簡単に抜けちゃうし、射精してから使えるようになるまで数分はかかるんだよ? 君は知らないだろうけどさ」  身を乗り出したマティアスが、恍惚とした顔でリョウヤの下腹部をゆるりと撫でる。陰紋の上の、丁度アレクシスが肉欲の切っ先を突き入れている部分だ。   「ここまで入るんだ、いいね。あと何回出したら引っこ抜けそう?」 「普段であれば……4、5回ほどだな」 「多いだろ! すっごいな。死んじゃったらここの中のぞいてみたいよ。どんな形になってるのかな」 「寝てただろうが」 「若かったんですよ」  リョウヤはもう疲れ果てたのか、男二人の会話にも反応せずふらふらと目を閉じかけていた。まだまだこれからだというのに、疲れるのが早い。マティアスが楽しそうに、しかし軽薄にリョウヤを見降ろした。 「坊や、ほら元気を出して? これからが本番だよ。大好きなご主人様にたっぷり種付けしてもらおうね……?」    結局、アレクシスは連続で、リョウヤの中で数回吐精した。      * * *  膨らんだ返しが萎んできた頃、貫いている体の負担を考えることなく一気に抜き取った。リョウヤの真っ赤に腫れあがった穴から、こぷっ、こぷっと白濁液と混ざった赤が流れて、シーツに染みる。  時計を見れば、そろそろ別店舗への視察の時間だった。 「頑張ったね坊や、じゃあ次は私が──ってあれ、もう行くのかい?」 「こっちは仕事だ、四六時中暇なおまえと違ってな」 「失敬だな。今日は休日なんだよ、自発的なね」  白濁と血で汚れた肉欲を、用意されていた薄いタオルで拭いゴミ箱へと放り投げる。下を履き直し、ベルトを締め直してさっさとベッドから降りた。 「信用していないわけではないが、2人ほど部屋につけさせてもらうぞ」 「かまわないよ。ふふ、誰かに見られながらするのって久しぶりだなぁ、すっごく興奮する」  相変わらずの変態っぷりだ。 「僕が帰ってくるまでには終わらせておけ」 「オーケー」 「それと……」 「まだなにかあるのかな?」 「油断はするな。それは反抗的な上に手癖も足癖も悪い。隙を見て攻撃してくるかもしれんからな」 「噛まれたこと相当根に持ってるなぁ。はいはいわかりました、肝に銘じておくよ……じゃあ坊や、今からは私とエッチなこといっぱいしようか」  待ってましたとばかりに、マティアスが反応の薄いリョウヤに跨った。それ以上は見る必要もないので踵を返す。扉を閉める直前で肩ごしに振り返ったが、マティアスがリョウヤの濡れた後孔を弄り始めたところだった。  力を失っていたリョウヤの足がぴんと伸びてシーツを蹴るが、マティアスに簡単に押さえ込まれる。  マティアスはアレクシスと違って、ただ腰を振って吐き出してスッキリするような男ではない。リョウヤのことは随分と気に入っているようだし、これから時間をかけて執拗にいたぶり尽くすのだろう。  今はまだ意識を保っているが、流石のリョウヤも事が済めばただの性玩具に成り果てるに違いない。    早く壊れろと、思う。これでリョウヤも従順になるはずだ。  嫌な顔をせずに足を開き、歯を立てることなく僕を受け入れ、僕に縋り付き、哀願し、僕の前でみっともなく喘ぎ狂い、僕の首と腰に腕と足を絡めて、マティアスではなく、僕を見つめて、僕のことを──はた、と、止まる。  なんだ? 次々と浮かび上がった煙のような言葉は最後まで形にならず、霧散してしまった。  だがまあ、深く考えることでもないだろう。今は仕事の方が大事なのだ。 「や、ぁぁ、あ……」  扉を閉めてもなお聞こえてくる弱々しい悲鳴と、じゅぷじゅぷと漏れる挿入音。部屋の外に控えていた使用人に部屋の中でマティアスを見張っているよう指示を出し、汚れた手袋を手渡して替えの物を持ってこさせた。  あとはもう、リョウヤのことなどさっさと意識の外へと追い出して。    仕事場へと向かうため、アレクシスは広い廊下を歩き始めた。  ──────  *R18シーンは一旦は終わりです。  *痛々しいシーンが多数ありました。お付き合いいただき本当に有難うございました。

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