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運命の相手
「お前が…?」
思わずポツリとこぼすと、桜庭は不思議そうに首を傾げた。
「どうかしましたか?」
俺は繋がった糸をグッと引っ張ってみたけれど、ビヨーンと伸びて、千切れる様子はない。
コイツも俺も男。…なのに、運命なんておかしいだろ。絶対有り得ねぇ、絶対認めねぇ!
思わずキッと睨みつけると、桜庭は目を丸くしてから、ふにゃりと頬を緩ませた。
「先輩、怒った顔も可愛いですね。」
「…っるせーな、テメェなんかと付き合うわけねーだろばぁぁああか!」
相手は男。しかも変な奴、後輩…混乱した俺は気がつけば顔を真っ赤にして怒鳴りつけていた。
突然の訳の分からない行動に桜庭は目を白黒させた。
「え…?付き合っ…?」
やべっ、口滑った…!
俺は慌てて両手で口を塞いで、目を逸らそうと俯いた。
引いただろうな。初対面のヤツ…しかも男に付き合うとかどうの言われたら俺でもキモいと思う。マジで始業式早々何やってんだよ…。
はぁ、と深いため息を溢して、小さく首を横に振った。
暫く無言だった桜庭をチラリと見ると、何故か頬をポッと赤くしていた。
「せ、先輩やだなぁ〜!付き合うなんてまだ早いですよっ!や〜、本当に付き合えたら願ったり叶ったりなんですけどね。」
へへ、と照れたように、満更でもなさそうに頬を掻きながらチラリと俺を見た。
俺はサァッと血の気が引くのを感じた。
う、嘘だろ…?マジで言ってんのか?こんなキラッキラの爽やか王子みてーなヤツがゲイ?
しかも、よりによってなんで俺なんだよっ!
ジャリッと音を立てて、思わず後ろへ下がると、桜庭は眉を下げた。
「酷いですよ。先輩から告白してきたのに。」
ブスッと口を尖らせた。
いやいや、思わず『付き合う訳ねぇだろ!』的なことを言ってしまったけど、告白した覚えねーんだが?!
脳内お花畑な桜庭にドン引きしながら、グッと腕を突っ張って、腕の中から解放してもらった。
「もう離せ!教室に行く。」
「え?もうですか?」
「あぁ。」
俺は目を丸くした桜庭の次の言葉を待たずに背を向けて歩き始めた。
「先輩、また会いましょうね。」
なんだか幸せそうな声色だったけれど、俺は気にしないことにした。
だって気にしたってキリがない。それに、また会いましょうなんて社交辞令に過ぎない。
…本当は、また会いにくると分かっていたけれど、今は自身にそう言い聞かせて、心を落ち着かせたかった。
振り返らずに手を振ると、俺は校舎の中に入った。
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