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第1話

 その日鳴った携帯を俺は取ることが出来なかった。  エアコンのない古いアパートが貧乏大学生の俺の城だった。その日の夜も蒸し暑くて扇風機の前でぐったりしながら、何となくつけたテレビを流し見していた。  アパートのインターフォンが鳴ったのはもう寝ようかとテレビを消した頃。こんな時間にエアコンのない俺の部屋にやって来る奴はいない。少し警戒しながら玄関に向かうと外から声がした。 「佐伯? もう寝ちゃった? 津島だけど……」 「津島?」  津島は大学に入ってから出来た友人だ。  短気ですぐに感情が顔に出る俺と違って、いつも穏やかで柔らかい雰囲気の持ち主で誰からも好かれていた。  顔も所謂、イケメンというやつで少し線の細い儚げな感じが守ってあげたい気持ちにさせると女子達に人気だった。 「こんな時間にごめんね」  玄関を開けると津島を中に招き入れた。何だか顔色が悪く見える。  冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して、狭い部屋に置いた小さなテーブルを間に挟んで津島をそこに座らせると目の前にお茶を置いた。

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