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第2話

 小さく「ありがとう」と言う津島。けれど、お茶には手を付けずに俯いていて、前髪から覗く長い睫毛が綺麗で印象的だった。 「どうかしたのか? 確か今、休学してたよな?」  大学生活二年目になった初夏、暫く津島の姿を見てないなと気が付いて連絡を入れた事がある。  津島は大学を休学する事になったと返事をして来た。『なんで?』の問いに津島からの返事はなくて、結局そのまま今に至る。 「うん、あの時は連絡くれて嬉しかった。返事しなくてごめんね」 「別にいいけど……。何かあったのか?」  俯いていた顔を上げて俺に微笑みかける津島はどこか哀しそうで、見てるこっちが胸が苦しくなる。 「うん、あのさ、大学……もう行けないからさ……」 「行けないって……やめるのか?」  津島は黙って頷いた。俺はそれが残念で仕方なかった。  性格は全然違うけれど、津島とは気があった。大学でとっている講義も結構被っていて、一年の時はよく一緒に行動していた。  津島がそこにいるだけで周りが優しい空気になるような、怒っているのが馬鹿らしくなるような、そんな奴だった。俺みたいな短気な人間は津島といるだけで性格が丸くなった気がして、実際、共通の友人達にも「佐伯は津島といた方がいい」と言われるくらいだった。

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