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第5話 先輩と、ひとつになりたい(6)★

「んん、んっ……せんぱいっ……」 「――拓哉」  下の名で呼んでやれば、犬塚の体内がきゅんと狭まった。  間近で見つめ合い、そして互いに瞼を閉じぬままキスを交わす。そうしているうちにも、不破の腰使いが止まることはない。 「好きだ、拓哉……拓哉っ」 「ん、はっ……おれも、だいすき……っ」  思わず声が漏れてしまいそうな快感に息を詰めながら、がむしゃらに腰を叩きつける。とうに理性なんて手放していて、獣さながらに犬塚のことを求め続けた。  あるのはシンプルな欲望だ。やがて痺れるような快感が全身を駆け巡って、己の限界が近いことを知った。 「わり、もうもたねえかも」  呟くなり、ラストスパートをかけるべく律動を速める。  犬塚もまた限界が近いのか、懇願するかのごとく下腹部を擦りつけてきた。 「あ、ンっ、せんぱい、前もさわって――いっしょにイキたい……ッ」 「っとに、おねだり上手だな」  腹の間で擦られた犬塚のものは、今にも弾けそうなくらい膨れ上がっていた。体液でまみれたそれを扱いてやれば、犬塚は背をしならせて悦ぶ。 「ひあっ、あ!」 「ほら、すぐにイかせてやる」 「んっあ! イく、イくぅ……も、イッちゃうっ」  限界を訴える犬塚の後孔がきつく収縮する。  射精を促される感覚に不破も低く呻いて、高みへと昇り詰めていった。 「俺も、イく……っ」  そして、渾身の力を振り絞って屹立を押し込んだ瞬間、 「あ! あンっ――んん!」 「ん、くッ……」  唇を重ねながら、ほぼ同時に絶頂を迎える。不破は熱い飛沫をゴム越しに何度も注ぎ込み、対する犬塚も腹をししどに濡らせた。  聞こえてくるのは、互いの息遣いと心臓の音だけ。  どちらからともなく口づけをといたあとも二人は何も言わず、ただぐったりと四肢を弛緩させるのだった。  それからしばらく――やっと呼吸が落ち着いた頃合いで、不破は犬塚に声をかける。 「ありがとな、犬塚。すげー気持ちよかった」  額に張りついた髪をかき上げてやりながら礼を言う。対する犬塚は、いつものように肌を擦りつけてきた。 「俺もです。えへへ……初めてえっちしちゃった」  幸せそうにはにかむ姿は可愛いなんてものじゃない。愛しさを通り越して、いっそ凶悪的ですらある。 (何なんだ、このクッソ可愛い生き物はっ!)  不破は悶絶して犬塚を抱きしめた。途端、犬塚が身をよじる。 「ひゃ!? わっ……せ、先輩、待って! あの、先輩のがっ」 「……あ」  まだ繋がったままだったのを忘れていた。  不破の分身は達したばかりだというのに、萎える気配もなく、犬塚の反応によって再び熱を持ち始めている。このままでは再び臨戦態勢に入ってしまいそうだ。 「わ、わりィ! 別にそーゆーつもりじゃねェんだがっ」 「あああの! いいですっ、いいですから……その」  顔を真っ赤にさせて、犬塚が言い淀む。  彼のそこは熱く脈打っており、不破のことを離そうとしない。据え膳食わずは何とやら――こんなふうに誘われて応じないわけがなかった。 「だったら……もっかいだけ、いいか?」  そうして不破は、新しいコンドームのパッケージへと手を伸ばすのだった。

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