34 / 37

番外編 アフターストーリー(4)★

「そろそろコイツの出番かな」  言って、取り出したのはアナルバイブのパッケージである。  先日購入したばかりのそれを開封し、いそいそと乾電池を本体に差し込む。試しに電源を入れてみたら、鈍い振動音が鳴り響いた。 「うわっ、わ……それ、ほんとに使うんですかっ?」  犬塚が眉尻を下げて振り向いてくる。事前に了承は得ていたけれど、初めて見るであろうアダルトグッズには、やはり抵抗があるらしい。  アナルバイブは凸凹の連なったビーズ形状をしている。太さはそれほどでもないものの、長さがあってかなり奥の方まで届く代物だ。いかにもな見た目からして、犬塚がそうなるのも無理はない。 「大丈夫、こういったのも気持ちいいって」  不破はアナルバイブの電源を一度切って、期待に胸を膨らませつつ後孔に宛がった。ローションを追加したうえで、馴染ませるように軽く動かせば、犬塚は熱っぽさを孕んだ吐息を漏らす。 「っ、は……」 「な? 痛くしねェから力抜いてて」  なだめるように囁いて、不破は少しずつアナルバイブを押し進めていった。  裸エプロン姿というだけでも十分そそられるのに、尻を突き出させてこんなにもいかがわしいことをするだなんて。自分で提案しておいてなんだが、これは相当――「ヤバい」としか言いようのない絵面である。少し欲張りすぎたかもしれない。 「あっ、ン……せんぱいっ」 「今の拓哉、最高にエロすぎ――これどう?」 「ううっ、ぼこぼこしてんのっ……ヘンなかんじ、するう」 「ああ、このタイプは引き抜いたときがいいんだってさ」  半分ほど入ったあたりで、今度はゆっくりと引き抜いてみる。すると、即座に犬塚の口から嬌声が上がった。 「ん、あっ! あ、あっ、あぁ……ッ」  凸凹の部分が内壁や後孔を擦っていくのが堪らないのだろう。犬塚はこんな玩具ひとつでも大きく反応を見せ、ビクビクと体を震わせる。 「いい反応。このオモチャ気に入った?」 「はっ、ん……ぁ」 「はは、もうすっかり夢中か」  不破は小さく笑い、再びアナルバイブを沈めた。  先ほどより奥へと挿入してから、抜け落ちるギリギリのところまで抜き挿しすれば、喜悦の声が絶え間なく聞こえてくる。 「あっ、あ――や、んんっ」 「うんうん、たくさん気持ちいいな? これだと奥も前立腺も、一緒に刺激されていーだろ?」 「ん、んっ……いい、きもちいいっ」  不破の言葉どおり、犬塚は初めての感覚に夢中になっているようだった。  顔を覗き込めば、瞳はとろんとしていて、口元からはだらしなく唾液が糸を引いている。流し台についていた手は力が入らなくなったのか、肘をつくような形で崩れ落ちてしまっていた。  だが、そのような状態になってもなお、腰を高く上げたままで快感によがっている――なんとも淫猥な光景に、見ているこちらの方がどうにかなりそうだ。 「なあ、バイブの電源入れていい? もっと拓哉がよがってんの見てェ」  不破は甘えるような口調で言って、犬塚のうなじや背筋に口づけた。  問いかける形ではあったが、最初から答えなど聞くつもりはない。返事を待たずに電源を入れると、ブウゥンという低音とともにアナルバイブが振動し始める。

ともだちにシェアしよう!