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kiss06
車に乗って、俺は袋を抱きかかえていた。
シートベルトが軋むくらい。
類沢はそれを眺めて笑う。
「後ろに置いとけば?」
「持ってたいんです」
袋の口からウイスキーの香りが鼻をくすぐってくる。
酔いそうだった。
「もう発作はないの?」
「そうですね。医者もそろそろ運動しても大丈夫だって言ってましたし」
家に着いて、類沢が俺のドアを開ける。
そっと降りる。
痛みが引いても、習慣になってしまっていた。
紙袋を揺らしながら玄関に向かう。
「今日は煙草吸ってませんね」
「なんでわかるの?」
「なんとなく」
類沢は鍵を開けると、俺の腕を引いた。
バタンと扉が閉まる前に、唇が重なる。
少し上を向いて、俺は応えた。
首筋に指が這い、声が洩れる。
「ふ……ッッ……んぁ」
冷たい扉に背中を押し付けられる。
目を瞑って、舌を絡ませる。
煙草じゃなくて、先生の香水の匂いがする。
甘くて、狂わされる香り。
「……ッく」
いきなり突起を強く挟まれ、全身がビクッと痙攣した。
「敏感すぎ」
類沢は濡れた唇を舐め、蒼い目で俺を見つめた。
それだけでゾクゾクと震えが走る。
触れられたのは、退院してから初めてだった。
だから指の動きに全神経が反応してしまう。
俺は火照った顔を背けて、類沢の手を掴む。
「先生……背中、痛いんですけど」
「じゃあ中に入ろうか」
一人興奮していた気分になって、俺は口を曲げながら後に続いた。
ソファに座り、肩を抱かれる。
力は入っていないのに、俺は類沢に体をもたれかけた。
見上げると、余りに近い距離に目を伏せてしまう。
「何買ったの?」
「……明日見せるんです」
「日付なんて関係ないのに」
類沢は傾いた俺の頭にキスをした。
それから手を伸ばし、紙袋を取り上げる。
「ああ! ちょっ」
俺はガバッと起きあがるが、時既に遅し。
黒と紫の螺旋が描かれた箱が現れる。
「へえ」
「先生っ。反則ですよ……!」
しかし類沢は止められて止まる人ではない。
包みを剥がし、中身が露わとなる。
俺は何か気恥ずかしくて、顔を覆ってソファに崩れた。
「チョコだね」
「……チョコです」
類沢は一つを摘むと、俺に差し出した。
「? 先生のですよ」
「僕は食べられないから瑞希にあげる」
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