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「さっさとしてよ」  けだるく俺の首に寄り添う。  指先がうなじをなぞる。  空に止まった俺の目を睨み、ぐいと顔を自分に向ける。 「あいつが勝っちゃうよ?」 「……ああ」 「おれが手に入んないよ」  シャツのボタンに手をかける。  プツ。  上から一つずつ外していく。 「本当のこと言うとね……あんたに勝ってほしいわけ」  拓いた胸に手を滑らせ、鎖骨に頬擦りをする。 「そうだ。あんたの名前なんだっけ」  冷たい肌。  耳までの髪がかする。  その反応を見るように見上げる。 「まあ……いっか。名前も知らない奴とヤるのはいつものことだし」  髪を掻き上げ、縛る。 「邪魔なんだよね、切っちゃいたい。でも外に出らんないからさ」 「よく喋るな」 「あんたが無口なんだから」  ベッドに座り、頭の後ろで手を組む。 「名前呼ばれたくないんだ」 「じゃあ好きに呼ぶよ」  ギシ。  腕を引かれる。 「おれを救ってくれる王子サマ。だから應治ね」  首に抱きつき、キスをされる。 「王子?」 「應治。かっこいい名前でしょ。おれね、会ってみたいの。オウジって名前の王子様に」 「ふっ……」 「あっ。笑ったね、おれも呼んでよ」  耳元で囁く声。  それしか聞こえない。  このあと凛に抱かれるというのに。  なんでお前は楽しそうなんだ。 「光樹……」  なんでこうなったんだ。

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