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 初めて見たのは、コンビニの裏の河原だった。  小雨の中、棒アイスを咥えて傘も差さずに立っていた。  水滴に溶かされたチョコが白い生クリームを道連れに地面に落ちていく。  顎に伝う液体をどうでもよさそうに一瞥して、轟々と流れる川を眺めていた。  ほっそりとした体に濡れたシャツが張り付いて、短パンからは毛が一本も生えていない滑らかな脚が覗いていた。  少年のように。  俺はビニール傘を指先で支えながら、魅入られたみたいに近づいたんだ。  長い睫毛を上に向けて、じっと見つめてくる。  アイスを口から外し、ボタリと落として、汚れた口で笑った。 「あんたさ、雨……好き?」  どんな言葉を予想したわけでもないが、俺は自然と答えていた。 「ああ。好きだ」  彼は愉しそうに手を上げて雨に打たれた。 「おれも好きー……」  そして、柔らかな草むらに倒れた。  声を上げる間もなく。  衝動的に走り寄る。  閉じた眼からは、水滴と混ざって涙が流れていた。  首筋に残る縄の跡。  つい手首を見てしまう。  細い腕の先には、沢山の刃物の切り傷。  額に張り付く髪を退けると、弱弱しい青年そのものだった。 「おい」  反応はない。  ただ、瞼の裏で眼球が動いているだけ。  眠っているんだ。  俺は少しだけ安心した。  周りを見渡しても、人影はない。 「……っくそ」  見て見ぬ振りができたら……  きっとああはならなかったのに。  俺は片腕で彼を担ぎ上げ、よろめきながら歩き出した。  何かを踏みつけた音がして眼を落すと、緑の中で黒と白の液体が互いを犯し合うように波打っていた。

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