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reach03
初めて見たのは、コンビニの裏の河原だった。
小雨の中、棒アイスを咥えて傘も差さずに立っていた。
水滴に溶かされたチョコが白い生クリームを道連れに地面に落ちていく。
顎に伝う液体をどうでもよさそうに一瞥して、轟々と流れる川を眺めていた。
ほっそりとした体に濡れたシャツが張り付いて、短パンからは毛が一本も生えていない滑らかな脚が覗いていた。
少年のように。
俺はビニール傘を指先で支えながら、魅入られたみたいに近づいたんだ。
長い睫毛を上に向けて、じっと見つめてくる。
アイスを口から外し、ボタリと落として、汚れた口で笑った。
「あんたさ、雨……好き?」
どんな言葉を予想したわけでもないが、俺は自然と答えていた。
「ああ。好きだ」
彼は愉しそうに手を上げて雨に打たれた。
「おれも好きー……」
そして、柔らかな草むらに倒れた。
声を上げる間もなく。
衝動的に走り寄る。
閉じた眼からは、水滴と混ざって涙が流れていた。
首筋に残る縄の跡。
つい手首を見てしまう。
細い腕の先には、沢山の刃物の切り傷。
額に張り付く髪を退けると、弱弱しい青年そのものだった。
「おい」
反応はない。
ただ、瞼の裏で眼球が動いているだけ。
眠っているんだ。
俺は少しだけ安心した。
周りを見渡しても、人影はない。
「……っくそ」
見て見ぬ振りができたら……
きっとああはならなかったのに。
俺は片腕で彼を担ぎ上げ、よろめきながら歩き出した。
何かを踏みつけた音がして眼を落すと、緑の中で黒と白の液体が互いを犯し合うように波打っていた。
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