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reach06
「ねえ」
「……なんだ」
「なんでこの瓶空いているんだろうね」
眩暈がしたのは、その瞬間だった。
否、今まで気にしないようにしていた感覚が一気に襲ってきた、が正しい。
「まさか……」
「これさ、おれがいつも使っているタイプなんだけど弛緩作用もあるんだよ? 少量でも結構効くのね。流石におにぎりに付けたことはないけどさー。梅の匂いに上手く消されてくれたって感じ?」
ガッと机に手をつく。
その肩に光樹が抱き付く。
甘い香りがした。
「あんたっておれと全然違う世界に住んでるんだね」
押し返そうとしても力が出ない。
「普通は赤の他人の隣で何かを食べたりなんかしちゃだめだよ。何を紛れ込まされるかわかったもんじゃないのに」
煩いくらい喋る。
光樹はそっと俺をベッドにもたれかけさせると、ニィッと笑んで唇を重ねた。
拒絶したくても唇が自然と空いてしまう。
舌を絡み取られ、音を立てて吸われる。
腿に乗った腰が擦り付けるように揺れる。
「はっ……んん」
息継ぐ間さえ与えてくれない。
頭がぼうっとしてくる。
唇を軽く噛んで離れた光樹は見せるように舌をちらつかせた。
「ちょっと煙草の味がするのが残念」
「か……ってにしといて……」
「ふふー。もっと早く会ってたらこのまま連れ去られたいのにな」
連れていく、とは違うのか。
自虐的に微笑む俺の頬に触れる。
「おれ、もうすぐ売られちゃうの。もともと商品なんだけどね。すっごい厭な奴に売られちゃうの。死ぬまでそいつのアレを咥えて過ごすんだって」
軽い口調で言った後、空しそうに俯く。
俺は震える手で、そっと腕をつかんだ。
はっと顔を上げた光樹が目を丸くする。
自傷の跡を舐める。
びくんと腕の筋肉に緊張が走る。
仕返しだというように歯を立てて、歯型を残す。
離されるとすぐに光樹がまたキスをしてきた。
情動的な。
「本当に……会いたかったなあ。雨が好きなあんたに」
お互い濡れた唇を拭いもせずに見つめ合う。
「もう少しだけ……もう少しだけ一緒にいたいんだけど」
雷が鳴る。
一瞬部屋が真っ白になった。
それを境に光樹の顔から表情が消える。
「薬を盛ったのは、おれの身元がばれると困るから。あんたを動けなくして出てくため」
冷たい声。
俺が買ってきた服に着替えて。
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